一時使用賃貸借契約は海外転勤で自宅を貸し出す人に特に魅力的に見える賃貸借契約の形態のひとつです。そんな一時使用賃貸借契約の裁判例をまとめました。

一時使用賃貸借契約/否定/大阪地平3.12.10判決

転勤等で一定期間家を空ける必要がある貸主にとって、一時使用賃貸借契約がどのようなリスクを伴うか、そしてなぜそれが借地借家法の適用を不当に回避する手段としては適切ではないかを詳細に説明しています。特に、「大阪地平3.12.10判決」を例に挙げて、契約が一時使用と明記されていたにも関わらず、その契約が一時使用賃貸借契約として認められなかった理由を解析しています。この裁判例から、契約書に「一時使用」と記載するだけでなく、契約が実際に一時使用に該当するかを裏付ける具体的な事実が必要であること、そして一時使用賃貸借契約を借地借家法の抜け道として利用することの危険性が強調されています。記事は、一時使用賃貸借契約を検討している貸主に対して警鐘を鳴らし、より適切な選択肢として定期借家契約の利用を推奨しています。

一時使用賃貸借契約/否定/東京高平5・1・21

この判決例では、契約書に一時使用と明記されており、老朽化したアパートの建替え計画があるとされていましたが、計画の具体化が不十分である点、借主が契約期間満了後も賃料を支払い続けていた点、借主の転居困難性などが理由で、裁判所は一時使用賃貸借契約認めませんでした。これにより、貸主が計画していた通りには進まず、借主はアパートに住み続けることが可能となりました。

一時使用賃貸借契約/肯定/東京地平成10・7・15

この裁判例では、転売を目的とした一時的な賃貸を行っていた貸主(原告)と、その物件を賃借していた複数の企業(被告)間で発生した問題が争点となりました。特に注目すべきは、契約期間の満了に伴う賃貸借契約の終了と、貸主の売却計画との関係にあります。裁判所は、特約に基づき契約期間の満了で賃貸借契約が終了したと認定し、一時使用賃貸借契約肯定された事例としています。

一時使用賃貸借契約/肯定/最高裁判所判決昭和39(オ)143

この最高裁判例では、貸主が本件家屋から通勤し得る地に転勤してきたまでとの意味で一時使用を目的としたものであると認定しました。賃貸借には借家法の適用がなく、また、敷地が建物所有の目的で賃貸借されたものではないため、借地法の適用もないとされた最高裁の判例です。

まとめ

海外転勤が決まり、自宅を一時的に貸し出すことを考慮している方々へ、一時使用賃貸借契約に関する情報を提供します。多くの方がこの契約形態について検討される理由の一つは、不動産業界のリロケーションに関する大手企業が推奨しているためです。しかし、この契約形態が借地借家法の抜け穴として利用されている現状に対し、疑問を抱く声もあります。

何が正しいのかをあなた自信で判断ができるように過去の裁判例を紹介してきました。

ただ、これらの判決はすべてが定期借家制度が施行される以前のものであり、現代では定期借家契約の利用が推奨されます。

一時使用賃貸借契約は一定の条件下では有用ですが、貸主が帰国後に自宅に戻れないリスクを含んでいるということは念頭において、あなたにとって最も最適な契約形態を見つけましょう。