不正の繰り返しで毎度金融業界を賑わしている不動産業界ですが、また大きな衝撃が走りました。

全国の金融機関から32億円以上を不正融資

厳格な審査が求められるはずのアパートローンの融資において、巧妙な手口が露見しました。

人間関係の整理

関係する人たち
  • 不動産コンサルタント会社「UP-Fコンサル」社長 31歳
  • UP-Fコンサルの社員: 逮捕された2人(具体的な名前は記載なし)
  • 三菱UFJ信託銀行社員 47歳

不動産会社の宅建業登録情報

現在登記は何かの変更手続き中なのか閲覧できない状態になっておりました。

まずは不動産会社の宅建業の登録情報です。大した情報を得ることはできませんが、”UP-F”で「ユーピーエフ」ではなく”アップエフコンサル”と読むようです。

兼業として、”不動産管理業”の登録は宅建業の申請ではしているようです。一棟物の売買をして、そのまま賃貸管理を受託してというのが、多いので、賃貸住宅管理業者の登録もしているかなと思ったのですが、情報は見つけることができませんでした。

会社の設立が平成29年3月で、最初の宅建業免許の取得が平成29年5月26日なので、宅建業免許取得前提で会社を起ち上げたというのは、ほぼ間違いないでしょう。

報道を見る限り、代表の方の現時点の年齢は31歳ということなので、7年前に会社を起ち上げた頃は、24歳ということになり、若いのに対したものだなと感じました。

宅建業免許の番号が(2)となっているので、一度宅建業免許の更新がされているということもわかります。

免許証番号 東京都知事免許 (02)第100615号 法人・個人の別 法人
免許の有効期間 R04年05月27日からR09年05月26日まで 最初の免許年月日 H29年05月26日
商号又は名称 UP-F(アップエフ)コンサル 株式会社
代表者の氏名 割愛
主たる事務所の所在地 東京都千代田区平河町2-10-4 白砂ビル永田町2F
電話番号 03-5213-4292
加入している 宅地建物取引業保証協会 (公社)全国宅地建物取引業保証協会
免許申請時の資本金 5,000 千円

銀行員の逮捕というかぼちゃの馬車を超える衝撃?

今回の報道を見て最初に驚いたのが銀行員が逮捕されたという部分でした。

最初は三菱UFJ信託銀行の社員がかぼちゃの馬車の被害者の方々が訴えている、スルガ銀行が不正に関与したのと同じ流れでの逮捕かと思ったのですが、そうではありませんでした。

各報道機関は”三菱UFJ信託銀行”を大きくピックアップしすぎではないかと感じてしまいました。

警視庁捜査2課は5日、詐欺などの疑いで、三菱UFJ信託銀行(東京都千代田区)社員〇〇容疑者(47)=品川区=と不動産コンサルタント会社「UP-Fコンサル」(同)社長の◯◯容疑者(31)=港区=ら男計4人を逮捕した。

「ニセ銀行サイト」で不動産ローン審査は突破された 三菱UFJ信託行員ら、3億8000万円詐欺の疑いで逮捕

現時点でわかっていることからは、三菱UFJ信託銀行の社員さんは不動産の”買主“という立場でした。

事件の整理

報道から読み取れる情報から事件を整理してみます。

三菱UFJ信託の社員さんは買主だった

2022年3月下旬三菱UFJ信託の社員さんは物件を購入しました。

その購入した不動産は実際には3億3000万円で購入したとのことです。

融資を受けた金額は不動産価格以上

しかし、横浜銀行への融資申込は3億8000万円と実際の価格よりも5000万円高い金額だったようです。その差額の5000万円がUP-Fコンサル社へ支払われ、さらに三菱UFJ信託の社員さんは手数料として1000万円がUP-Fコンサル社へ支払われていた模様です。

3億3000万円でアパートを購入した三菱UFJ信託銀行の社員さんはその間賃料収入はしっかり得ていたようですので、名義の部分での不正などはなかったものと思われます。

今後の入居者さんの行く末が気になります。こういう時って自分たちが住んでいる建物についてそのような事が行われているか否か気がつくものなのかどうか気になるところです。

不正融資をもちかけたのは不動産屋?

報道からは、「不正融資を指南した」のはUP-Fコンサル社と書かれています。

私が閲覧した時にはもうUP-Fコンサル社のサイトは閲覧できない状態になっていました。

なのでXからの情報にはなりますが、ホームページからは、そのようなことを指示できるのか?と疑ってしまうような代表者の挨拶だなというのが印象です。

ドメインの所有者には”Yuu Hujimoto”となっていて。。。藤本なら”Fujimoto”になります。自分の名前の入力ミスというのは通常ないと考えられます。自分の名前をあえて少し変えて登録したのか、第三者に依頼してなのかは不明です。

当社から買わなくてもいいです。
(本当は買って欲しいですよ⋯)
ただ、不動産投資の営業マンに騙されて、
人生めちゃくちゃになるのは避けてください!
「その物件を買う前に当社にご相談ください。」
まだ新しく、こじんまりとした会社ではありますが、
当社の社員を通じて、ご購入されたお客様とは、
生涯を通じて関わっていける「繋がり」が
全員と出来ていると自負しております。
税金対策、節税関連のコンサルを得意としています。
同じ物件を買う&売るにしても、
他社よりもより有利な方法で目的を
実現できることをお約束します。

UP-Fコンサル社

いずれにしても、この裏側にいるのが31歳のこの青年だけであればそれは驚きで才能の使い所間違えてもったいないなと言わざるを得ないです。

かぼちゃ時代の通帳偽造の進化系

不動産業界での経験が長いと、新たな不正の報道を目の当たりにすることで、時代の変化を肌で感じることが避けられません。まずは、今見るとかわいいものだなというかぼちゃ時代の情報をあらためて見てみます。

かぼちゃの馬車の頃の報道で、通帳の偽造は「Windowsのペイントなのかい!」と当時のTwitterの不動産界隈では総ツッコミ状態でした。

宅建出るで!

下記にも2018年時点での通帳改ざんについて書かれていました。

社長を含む従業員4人がこつぜんと姿を消した。残る社員が机やパソコンをあさると、出るわ出るわ、画像編集ソフト「フォトショップ」で偽造された通帳コピーや源泉徴収票、三十数室中5室しか入居者のいない物件を「満室」と偽るレントロールまであった。病院の印鑑が複数あり、不健康な客の検査の数値をいじる「診断書」も精巧につくられていた。

「私はこうして通帳を改ざんした」

こちらの取材ではPhotoshopを使っている会社だったようですね。

いずれにしても、この頃のスルガ銀行は通帳の原本を確認せずにコピーだけでよかった模様です。

その後スルガ銀行では「通帳の原本の確認」の徹底が行われるようになったというものでした。

そして、時は流れて2022年。偽サイトを作って、その画面を銀行員に見せて融資を引っ張ったという時代になりました。

「偽サイトにご注意ください」という横浜銀行のサイトですが、自らが引っかかってしまったという感じと言えるのかなと。

横浜銀行を騙った偽メール・偽サイトにご注意ください

もっとも、おそらく残高があると見せたのは、この事件においては、三菱UFJ信託銀行の画面になっていたのであろうなと思われます。

金融機関の公式サイトに酷似したネットバンキングの画面を表示し、数億円の預金があると装っていた。

全国の金融機関から32億円以上を不正融資

その偽サイトを作ったのは、UP-Fコンサル社だということです。

“https://fcon.club/“が今は閲覧のできないUP-Fコンサル社のドメインです。

ITリテラシーの低い集団の不動産業界の中で、本物の銀行員を騙すことができるくらいのニセサイトを作成する技術は大したもんだなと関心する一方で、そんな技術を持っているような人がいて”.club”というドメインを取るものかな?と少し不自然に感じます。

これまた才能の無駄遣いをしてしまっているなと悲しくなります。

参考情報:【スルガ銀行不正】通帳偽装のやり方の歴史と進化

不動産鑑定士も関与?

購入価格が3億3000万円だったアパートを高く見せるために不動産鑑定書も用意していた。

全国の金融機関から32億円以上を不正融資

さらに不動産鑑定士の作成した不動産鑑定書も用意していたとのことも書かれています。

3億3000万円だったアパートを高く見せるために3億8000万円という鑑定書を作成したということにならないと事件との整合性が取れません。

そうなると不動産鑑定士も事件に関与していたのではないかと感じます。

もっとも、その鑑定書も偽造していたという可能性は多いにありますし、(捜査事情通)の意見としてなので、この事実は現時点では定かではありません。

架空の法人も作っていた?

これも同じ日刊ゲンダイさんの(捜査事情通)の部分です。

極め付きが売り主と同じ法人名義の銀行口座に振り込ませ、売り主に支払われたことを“確認”させるなどして銀行側の目を欺いていた。

全国の金融機関から32億円以上を不正融資

これだけだとなんとも言えないのですが、これを読み解くと。。。

売主が株式会社Aという会社だったとします。

UP-Fコンサル社は、株式会社A’という法人を作りました。(別の住所であれば法人を作ることは可能です)

その株式会社A’で銀行口座を開設しました。

買主の三菱UFJ信託の社員さんは、決済当日、融資を受けて、この株式会社A’宛に3億8000万円を送金させてました。

別の日か同日かは定かではありませんが、株式会社A'(実質UP-F社)が本物の売主株式会社Aに3億3000万円を送金して、本物の売主は着金したからOKとなり、株式会社A'(実質UP-F社)に5000万円が残りましたということになるのかなと。

毎回法人を作ってやっていたのであれば”2019年から2022年までに数10件”という数が妙にしっくりくるなとなりました。

あくまでも、(捜査事情通)の言葉なのでどこまでが真実であるかわからない中での想像の話に過ぎないです。

余談

全くの余談なのですが。。。日刊ゲンダイさんはこの社長さんのプロフィールの紹介を下記のように書いています。

〇〇容疑者は17年にコンサル会社を設立。順調に売り上げを伸ばし、都内の一等地のタワマンの上層階に住んでいた。求人サイトには「馬には乗ってみよ 人には添うてみよ」というタイトルでこうつづっていた。

全国の金融機関から32億円以上を不正融資

よく犯罪系の報道で見かけるのですが”タワマンの上層階に住んでいた”って何か関係あるのですかね。

一般の方々から”泡銭を稼ぎやがって”という印象を与えやすい言葉になるのですかね。

いずれにしても、また融資を受けるために、新しい基準ができるのではないかとなってしまうくらいの事件と言えるので、今後の動向を見守っていきたいと考えています。