自宅を購入したが、突然転勤が決まり自宅を賃貸に出そうかと考えられる際に比較的よく受ける相談があります。

「不動産は夫名義なのですが、私に賃料の送金をすることはできますか?」といった類の質問です。

普段は旦那さんはお仕事をされていて、賃貸の入出金の管理などは奥さんが代わりにやることを目的にということで比較的よくある相談です。

ただ、これは結論からお伝えするとあまり好ましい状態ではないと言えます。

それは贈与税と名義預金の問題という2つのリスクがあるためです。

贈与税のリスクと名義預金のリスクの両方から、この方法を避ける理由について掘り下げてみましょう。

夫婦間でもかかる贈与税

夫婦間の資金移動に関しては一般的にあまり警戒されていないかもしれませんが、実は意外と高いリスクを伴います。特に、夫の名義で所有している不動産からの賃料を妻の口座に送金する行為は、税法上、贈与と見なされる可能性があります。

贈与税とは、ある人から他の人へ財産が無償で移された際に課される税金で、夫婦間であっても例外ではありません。この点を誤解しがちですが、夫から妻への資金移動も、一定の条件下では税金の対象になり得ます。

贈与税の税率は見ての通り「とても高い」です。

日本の所得税率は5%から45%までの間ですが、贈与税の税率は5%~55%までの間と所得税よりも高い税率となります。

基礎控除後の課税価格200万円以下300万円以下400万円以下600万円以下1,000万円以下1,500万円以下3,000万円以下3,000万円超
税率10%15%20%30%40%45%50%55%
控除額10万円25万円65万円125万円175万円250万円400万円
贈与税の税率

賃料20万円の場合の贈与税の具体例

賃料が月額20万円の場合、年間の賃料収入は240万円になります。ここから贈与税の計算を行うために、基礎控除額110万円を差し引くと、課税対象となる金額は130万円になります。

この130万円が贈与税の課税対象額となりますが、贈与税の速算表によると、200万円以下の場合の税率は10%です。控除額は特に設けられていません。

したがって、贈与税の計算は以下の通りです:

  • 課税対象金額 = 130万円
  • 贈与税額 = 130万円 × 10% = 13万円

この計算により、月額20万円の賃料で年間に受け取る場合、贈与税として約13万円が発生する可能性があると見積もられます。

必ずしも贈与税がかかるわけではない

夫婦間や親子間での資金のやり取りには、贈与税が適用されることが一般的ですが、特定の条件下では贈与税が課されない場合があります。特に、生活費や教育費として支出される資金は、これに該当します。この非課税の規定は、家族内での支援が経済的負担なく行われることを可能にし、家庭の経済的な安定を支えるためのものです。

たとえば、配偶者や子どもが教育を受けるために必要な学費や、日々の生活を支えるための食費、住居費などがこれに該当します。これらの支出は、家族構成員の基本的な生活を支え、また将来への投資となる教育を可能にするために欠かせないものであるため、税制上支援されています。

この非課税措置により、夫婦間であっても互いに生活費や子どもの教育費としてお金を送ることが可能となり、これによって家庭内での財政的な調整が柔軟に行えるようになります。例えば、ある月に夫が特に多くの収入を得た場合、その一部を妻に送金して家計のバランスを取ることができますし、逆の状況も可能です。

このような制度は、家庭が直面する様々な経済的状況に対応するための一助となり、特に子どもの教育に関しては将来的な社会の発展にも寄与するとされています。家族間の支援が税の負担なく行えることで、教育の機会均等が保たれ、生活の質が維持されることが期待されています。

「夫婦間の資金移動は原則贈与税がかかるもの」という前提をもって資金移動の設計をするようにしましょう。

税務署が目を光らせてチェックをする名義預金

名義預金は相続税や贈与税の調査において、税務署が最も注意を払っている領域の一つです。なぜなら、名義預金が実際の所有権と異なる可能性があるからです。特に夫婦間や親子間での名義の使用は一見無害に見えるものの、税法上は大きな問題を引き起こす原因となり得ます。

名義預金とは?

名義預金とは、ある人物が実質的に所有している資金を別の人物の名前で管理することを指します。このような取り扱いが問題とされるのは、税法が個人の資産に対して課税するため、誰が実際の所有者かを正確に把握する必要があるからです。税務調査では、名義と実際の資金の管理が一致しているかどうかを厳しくチェックされます。

相続税や贈与税の評価においては、以下の5つの基準が総合的に考慮されます。

名義預金判定ポイント
  1. 購入原資の出捐者:資金を提供した人は誰か?
  2. 管理及び運用:資金の日常的な管理と運用を誰が行っていたか?
  3. 利益の受取人:資金から得られる利益を誰が受け取っているか?
  4. 関係性:被相続人と名義人や管理者との関係はどのようなものか?
  5. 名義変更の動機と経緯:なぜその財産が被相続人の名義ではなく他人の名義であるのか?

これらの要素を基に、税務当局は名義預金が真実の所有者によるものか、または税の回避を目的としたものかを判断します。例えば、夫が資金を稼ぎ、妻名義の口座に預けていた場合、妻がその資金の管理や運用を行っていると主張しても、夫が実際の経済的利益を享受している場合は、税務調査で問題とされることがあります。

まとめ

夫名義の不動産からの賃料を妻名義の口座に送金して管理するという行為は、不正な意図がなくとも、税務署から疑われるリスクが伴います。このような名義預金は、無実にも関わらず不要な税務調査の対象となることがあり、特別な事情がない限り避けるべきです。賃貸経営においては、財務の透明性を保つことが基本であり、税務問題を避けるためにも、賃料の流れを明確にし、正しい名義での口座管理を心がけることが重要です。この基本を守ることで、安心して賃貸経営を行うことができます。