Q
去年はじめて部屋を貸し出しました。賃料収入があったので確定申告をしなければならないかと思います。白色申告と青色申告どちらを選べばよろしいでしょうか?
A

結論からお伝えすると白色申告にて申告していただくのがよいかと思います。賃料収入(不動産所得)で青色申告を使うことができますが、事前の届出や、最大限のメリットを教授するためには事業的規模である場合が必要になるためです。

memo

令和5年度の確定申告の受付が始まりました。

確定申告の経費:賃貸経営で知っておくべき経費計上の基本 にて確定申告の際に経費にできるものをまとめています。

賃料収入があったら確定申告をする

部屋を貸し出して賃料収入が年間20万円以上あれば、それは確定申告をする必要があります。2023年の1月から12月分の確定申告は2024年2月15~3月15日までの間に申告をする必要があります。

大家さんになったからには、確定申告の業務は毎年必ず訪れる行事となります。

確定申告の際に、青色申告なのか?白色申告なのか?どっちが自分にとってよいのか判断がつかないという方も少なくないでしょう。

青色申告をするにはそもそも届出が必要

確定申告の時期になって、白色申告にするか青色申告するか悩まれる方が少なくないのですが、青色申告をするには、そもそも事前に税務署宛に届出をしている必要があります。その届出をする期限は”事業開始から2ヶ月以内”つまり、はじめての賃料収入があってから2ヶ月以内に届出をしている必要がありました。

それがなされていない時点で、まずその年度は自動で白色申告となります。翌年に向けて青色申告の届出をすることは可能ですが、よほど本格的に不動産賃貸業で収益を上げていこうと考えている方でない限り白色申告のままでよいというのが私の考えです。

賃貸大家さんは白色申告が大半

今まで確定申告に縁がなかった人が確定申告について調べると、「なんだか青色申告というのがいいらしい。国全体としても青色申告を推奨しているようだ。」と感じることと思います。

青色申告を調べると「なんだか65万円得しそう」「たくさん経費計上できそう」といった印象を受けていることでしょう。なので、収益を最大化したいと考える方ほど確定申告についてしっかりと調べて、青色申告を使うことができないのかの検討をされるのではないかと思われます。

しかし、こと賃料収入(不動産所得)の場合は白色申告の方が大半であるはずです。調べていくと賃料収入(不動産所得)のみの場合、青色申告のメリットを最大限に受けるには”事業的規模“である必要があるとたどり着くことでしょう。

事業的規模なのかどうかの判断は、下記2点が国税庁より明記されています。

  • 貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること。
  • 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

つまり。。結構な資産家です。

事業的規模にない大家さんの場合は控除を受けることができる金額は10万円になってしまいます。

青色申告と白色申告の比較

一般的に言われている青色申告と白色申告の比較になります。

項目 青色申告 白色申告
特別控除額 最大65万円(複式簿記)
10万円(簡易簿記)
適用なし
赤字の繰越 可能(10年間) 不可
家族への給与 必要経費として計上可 計上不可
帳簿の記載義務 複式簿記または簡易簿記 簡易簿記
減価償却 加速償却可能 一般償却のみ
決算書の提出 必要 不要
書類の多さと複雑さ 多くて複雑 少なくてシンプル
青色事業専従者給与の算入 可能 不可
純損失の繰越控除 可能 不可
繰戻還付 可能 不可
必要な申請書類 確定申告書B、青色申告決算書、貸借対照表、損益計算書、第三表、第四表 確定申告書B、収支内訳書
保存帳簿 総勘定帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、固定資産台帳(7年) 法定帳簿(7年)、任意帳簿(5年)

“必要な申請書類”という欄を見るだけで、「あっ白色申告の方が簡単そうだ」と感じることと思います。「帳簿の備え付けは義務付けられるようになったんだから帳簿はつけなくてはならなくなったから青色申告と手間は変わらない」という言葉を目にすることが少なくないのですが、これは普段の帳簿付けや申告に慣れている人の意見だなと感じます。今まで確定申告をしたことのない人が、転勤などでやむなく大家さんになり確定申告をしなければならなくなったという人にとっては、青色申告のたとえ簡易帳簿であっても、大きな負担になってしまうというのが通常と言えます。

「経理は税理士と外部に丸投げしない事業はそもそも失敗している」していると起業界隈では言われます。

これも、大家さんを専業に近い形で行うという方であればともかく、やむなく大家さんになってしまった方に通常時の帳簿付け、確定申告のための税理士報酬の負担をさせるというのを同列には考えてはならないことです。

「会計freeeやMoneyForwardなどのクラウド型の会計システムを使えば簡単」ともよく耳にしますが。。。簿記や会計などの前提知識があってこその言葉だなといつも感じます。

税務署が作成している不動産所得の記帳の仕方で白色申告と青色申告の簡易式の記帳例があるのですが、白色申告の説明ページは4ページほどで収まっているのに対して、青色申告は10ページほど必要になっていたりします。これは青色申告の方がやっぱり大変だよね。。。となるかなと。

白色申告はゆうなれば”家計簿”や”お小遣い帳”をつける事ができる人であれば作成することができるようなものです。

白色申告のデメリット

白色申告のデメリットは上記の比較表の青色申告で使えるものが使えないというところです。

ひとことでまとめると、節税効果は一切ないというところです。

それ以外では、少し難しい言葉になりますが”推計課税“を受けるリスクがあります。白色申告だから帳簿とか適当でいいやと書類をキチンと保管していないと、税務調査が入った時に、税務署側が勝手に計算して算出した税金を納めなければならなくなってしまいます。(税務署は同業他社と比較して算出するようですが。。。)

青色申告の場合は推計課税を受けることはありません。(個人的な経験から結局似たように処理することが多い気はしていますが。。。)

白色申告の方が税務調査が入りやすいとも言われてはいます。とはいえ、これは体感的に感じているもので、日本全体で見ると白色申告の方の方が圧倒的に多いわけなので、税務調査を受ける率という点からは白色申告の方が低いと捉えることもできます。

いずれにしても、税務調査リスクは白色申告の方が高いとは言われています。

ただ、普通に帳簿をつけていれば税務署が突然乗り込んで来ても何も恥じることはなく堂々としていればよいので、税務調査をデメリットとしてあげるのは、もとから悪い事をしようとしている人前提の考えで少し違ったかなと書いてみて感じました。

まとめ

賃貸収入のある不動産大家さんは一貫して「白色申告で十分である」と伝えてきましたが、青色申告を否定するものでは全くないです。簿記や会計の知識がある方であれば、ぜひとも青色申告を使っていただきたいと考えています。現時点で知識がなくとも「しっかり学びたい」という方であれば、それは青色申告を選んだ方がよいです。

ご自身が置かれた立場、確定申告のために使える時間などと向き合って決めましょう。そのために助言を欲しいという方がいらっしゃいましたら、私たちは全力でお手伝いいたします。税理士も無料で紹介いたします。

どうかひとりで悩まずお気軽にご相談ください。