家を貸し出したい時、賃貸管理会社を探す時に「媒介」という言葉に出会うことかと思います。その媒介の契約には種類があり、「専任媒介をゴリ押しする業者は信頼に値しない」という事をお伝えした。

「賃貸借契約には専任媒介契約は存在しない」という勘違いをされている方が少なくないなという印象を抱いているので、本日は賃貸の専任媒介契約についてお伝えします。

賃貸に専任媒介がないと勘違いしている人が多い理由

媒介契約について宅地建物業法ではこのように定められています。

(媒介契約)

第三十四条の二 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。

宅地建物取引業法

まずは、賃貸の媒介契約では書面の取り交わしをしなければならないのは、売買と交換のみしか書かれていないので、賃貸の媒介契約は口頭のみで成立するという事が書かれています。

そして、三十四条の二3項に”専任媒介契約”という文字が初めて登場します。

(媒介契約)

第三十四条の二3項 依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約(以下「専任媒介契約」という。)の有効期間は、三月を超えることができない。これより長い期間を定めたときは、その期間は、三月とする。

宅地建物取引業法

この中にも”賃貸”の文字がないため、「賃貸の媒介契約には専任媒介契約なんて存在しない!」という言葉が出てきているのであろうなと感じています。

契約自由の原則

契約自由の原則というものがあります。契約の内容を自由に決定できるという法律上の基本理念です。

法律で禁止されている事項や公序良俗に反する内容を除き、契約の種類、条件、期間などは、当事者の合意によって自由に設定することができるちうものです。

宅建業法の専任媒介契約に”賃貸”の文字がないからといって、「賃貸に専任媒介契約がない」という事にはなりません。

専任媒介契約の制限を互いに受け入れるということで、それを専任媒介契約と呼ぶことは全く問題のないことです。

専任媒介契約の内容も柔軟

売買や交換では、通常その人にとって人生に一度あるかないかの金額が動くような取引となるため、消費者を保護するために、宅建業法でプロである不動産屋さん側に規制をかけるようにと制限されているというものです。専任媒介契約にての制限を列挙します。

専任系の媒介の制限
  • 仲介依頼の数: 1社のみに依頼可能
  • 自分で借主を探す: 専任媒介なら可能。専属専任では不可
  • 媒介契約の期間: 法律で3ヶ月以内
  • レインズへの登録期限: 媒介契約締結日の翌日から7日以内(専任専属は5日以内)に登録
  • 登録証明書の受け取り: 登録証明書を不動産会社から受領
  • 業務状況の報告頻度: 2週間に1回以上 専属専任は1週間に1回以上
  • 媒介契約の更新: 自動更新不可
  • 成約登録:成約した場合は登録

これらを賃貸の媒介契約に盛り込むことは自由で、媒介契約書のタイトルを専任媒介契約書や専属専任媒介契約書とすることは自由です。

売買や交換では、例えば、契約期間の3ヶ月を伸長するということは認められていません。

それが、賃貸の媒介契約であれば宅建業法から外れない範囲にて柔軟に変更することは可能です。例えばレインズに登録しないと決めることもできます。

したがって、「賃貸に専任媒介契約がない」ではなく、「賃貸取引においても専任媒介契約を自由に結ぶことができる」というのが正しい帰結です。

媒介契約の比較表

媒介契約についてつらつらと書いてきました。あらためて、それぞれの媒介契約について表にまとめました。

契約の種類 専属専任媒介契約 専任媒介契約 一般媒介契約
仲介依頼の数 1社のみ 1社のみ 複数社可能
自分で買主/借主を探す 不可
媒介契約の期間 3ヶ月以内 3ヶ月以内 期間指定なし
レインズへの登録期限 5日以内 7日以内 任意
登録証明書の受け取り 必須 必須 必須
業務状況の報告頻度 1週間に1回以上 2週間に1回以上 報告を求めることが可能
媒介契約の更新 文書で申し出 文書で申し出 文書で申し出
成約登録 必須 必須 規程による

専任媒介は不動産屋しか得をしない

媒介契約ってどんなものだろうと調べ直して書いてきました。

あらためて感じたことは。。。「専任媒介って売主/貸主の選択の自由を奪っているだけで、その選択の拾を奪う割には売主/貸主にメリットが少なすぎるな。。。」というのをあらためて感じました。

まとめ

不動産取引、特に賃貸において媒介契約を理解し、適切に活用することは、貸主にとって非常に重要です。今回の記事を通じて、専任媒介契約が賃貸取引においても自由に結ぶことが可能であること、そしてその制限やデメリットを理解していただけたかと思います。

不動産取引は、多くの人にとってはそれほど頻繁に行うものではありません。そのため、一度の取引で最大限の利益を得るためにも、正しい知識を身につけることが大切です。

特に、専任媒介契約は貸主の選択肢を限定するものです。

この契約を選ぶかどうかは、貸主のニーズや状況によって異なりますが、選択する際には契約の内容をしっかりと理解し、自分にとって最適な選択をすることが重要です。

最終的に、不動産取引においては、契約の種類を正しく理解し、自分の状況に合った最良の選択をすることが成功への鍵となります。不動産会社との関係構築においても、信頼できるパートナーを選び、共に最適な取引を目指していくことが望ましいでしょう。今回の記事が、その一助となれば幸いです。