Q
確定申告で経費に計上できる費用はどのようなものがありますか?
A

主に経費とする事ができるものを書き出します。それぞれについて詳細にお伝えしますね。

また合わせて勘違いしやすいものについてもお伝えします。

経費に計上できるもの一覧

意外と狭い大家さんの交際費の範囲

ご自身の自宅を賃貸に貸し出している大家の皆さん、確定申告の申請を行う上での不動産事業の交際費についてどれだけご存知ですか?法人事業者と比較して、個人事業主の交際費の取り扱いには、意外と知られていない狭い範囲が存在します。さらに大家さんとなると認められる交際費の範囲はとても狭くなります。

交際費とは何か?

交際費とは、事業の取引相手に対する接待や供応、贈答などの費用のことを指します。この定義は、法人でも個人事業主でも変わりません。しかし、交際費として認められる範囲には、大きな違いがあります。

法人事業者の場合、交際費には一定の制限がありますが、比較的広い範囲での支出が認められる傾向にあります。

会社でよく接待などで「これ経費で落ちますか!」というやり取りをよく見かけるのがその現れです。

個人事業主、特にご自身の家を賃貸に出している大家さんの場合、交際費の範囲はかなり狭まります。取引の記録に基づき、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のみ、必要経費として認められるのです。

なぜ大家さんの大家さんの交際費の範囲が狭くなるかと言いますと、それは”取引相手“の範囲が少ないからです。税理士によっては、「入居者以外は取引相手とはならない」という情報を発信している方もいます。

入居者とお酒を飲みに行ったり、ご飯を食べに行ったりしないですよね。。。

お金が減らない経費:減価償却費

不動産投資とセットで語られる”節税“という言葉は、不動産投資だとこの減価償却費という特殊なお金が減らないという経費が大きいためです。

減価償却費という言葉を初めて聞いたという人は。。。ちょっと触っただけで理解できるという考えは諦めましょう。減価償却費について解説すると、とてつもない分量になってしまうので、触り程度の説明にとどめます。

減価償却費とは、物件購入時に支払った代金を経年に分けて経費として計上することで、実際には出費していないにも関わらず節税を実現する方法です。この経費計上により、利益が圧縮され、結果として税金が軽減されます。

減価償却費は、時間の経過とともに建物の価値が減少することを会計上で表したものです。

これだけで減価償却について理解できる人は皆無と断言できますので、あまり深く考えない事が重要です。

管理会社への管理手数料

家賃の集金、入居者の募集、入居者対応、建物の維持管理などを賃貸の管理会社にまかせているのであれば、通常、収入家賃の一定割合(例えば5%程度)として設定され、不動産収入を得るための必要経費として経費計上が可能です。

明細の確認と記録

管理会社によっては、確定申告に際して必要な経費に関する資料をまとめて提供してくれる場合もあります。このようなサービスを利用できるかどうかを事前に確認しておくと、確定申告の準備がよりスムーズに進行します。

ローンの返済は経費にできるのか?

ローンの毎月の返済については元金と金利に分けて考える必要があります。

元金は経費にならず、金利部分のみ経費となります。

金利の種類と返済方法

ローンの金利には「変動金利」と「固定金利」があり、返済方法には「元利均等返済」と「元金均等返済」の二つが存在します。変動金利は金利が変動するタイプで、固定金利は一定期間金利が固定されるタイプです。返済方法によっても、月々の返済額や経費計上できる金利部分が変わってきます。

確定申告の準備としては、自身のローンがどの金利タイプであるかを事前に把握しておくことが大切です。

保険料の経費計上

火災保険や地震保険にかかる保険料は、不動産収入を得るための必要経費として経費計上することができます。これにより、不動産投資における税負担を軽減することが可能になります。保険料は、不動産の運用に直接関連する費用であるため、税務上の経費として認められるのです。

社会保険料との違い

ここで注意が必要なのは、社会保険料は不動産所得の必要経費にはあたらないという点です。社会保険料は個人にかかる保険料であり、不動産投資とは直接関連しないため、不動産所得の計算において経費として計上することはできません。代わりに、社会保険料は「社会保険料控除」として総所得金額から控除されます。

管理費・修繕積立金の経費計上

管理費と修繕積立金は、その支払い時に損金算入(必要経費に算入)することができます。管理費は、経費として計上することは直感的に理解しやすいでしょう。

一方、修繕積立金については、経費計上するか、または積立金として資産計上するかの判断が難しいところです。

国税庁の見解としては、特定の要件を満たす場合には支払時に損金算入が可能とされています。

  • 区分所有者が管理組合に対して修繕積立金の支払義務を持つこと
  • 管理組合が支払われた修繕積立金に対して返還義務を持たないこと
  • 修繕積立金が将来の修繕のためにのみ使用され、他への流用がないこと
  • 修繕積立金の額が長期修繕計画に基づいて合理的な方法で算出されていること

これらの要件は、多くの分譲マンションで一般的に該当するものですので特段深く考える必要はないでしょう。

税金関係

計上できる税金を正確に把握し、毎年の確定申告で適切に処理することにより、不必要な税負担を避け、投資の収益性を最大化することができます。特に固定資産税や都市計画税など、毎年発生する税金については忘れずに計上することが重要です。

経費として計上できる税金

固定資産税・都市計画税

これらの税金は不動産所有に伴って毎年発生します。物件の維持に必須の税金であるため、しっかりと計上しておきましょう。

印紙税・登録免許税

これらは不動産を購入する際に一度だけ発生する税金です。購入時の経費として計上可能です。

不動産取得税

不動産を取得した際に発生する税金で、取得時の経費として計上できます。

自動車税・重量税

不動産投資に使っている部分に限り、経費として計上することができます。

経費として計上できない税金

一方で、所得税、住民税、法人税は不動産事業に直接関係なく発生する税金として課せられるため、経費として計上することはできません。これらの税金は、不動産投資以外の活動からも発生するため、経費計上の対象外となります。

経費計上できる税金 経費計上できない税金
固定資産税 所得税
都市計画税 住民税
登録免許税 法人税
不動産取得税
印紙税
自動車税、重量税(不動産事業に使っている部分のみ)
利子税
法人事業税

反則金・罰金

罰金は一見税金のようですが、車を運転している際の信号無視や一時不停止、駐車違反などの罰金は経費として認められません。

専門家に対する報酬

不動産事業に関連する専門家への報酬には、以下のようなものがあります。

司法書士への登記依頼

不動産の購入や売却、抵当権設定などの登記に関わる手続きを行う際に必要となります。

税理士への確定申告依頼

不動産事業による収入や経費を適切に申告するために、税理士の支援を受けることが一般的です。

弁護士への訴訟依頼

滞納や契約違反などのトラブルが発生した場合、法的な手続きをサポートしてもらうために弁護士に依頼することがあります。

経費計上のポイント

不動産事業を成功させるためには、専門家の知識と経験を活用することが欠かせません。

専門家への報酬を経費計上する際には、支払った報酬の明細や領収書をしっかりと保管しておくことが重要です。確定申告時には、これらの支払いを正確に申告することが求められるため、適切な記録管理が必要となります。

仲介手数料や広告費の経費計上

「入居者募集・入居のための費用」、特に仲介手数料や広告宣伝費は、物件の収益性を高めるために欠かせない経費となります。これらの費用は、賃貸物件の運用に直接関連するため、経費として計上することが可能です。

仲介手数料の経費計上

賃貸物件の入居者を募集する際、賃貸仲介会社に支払う仲介手数料は、経費として全額計上できます。これは、オーナーさんが自ら入居者を見つけた場合を除き、入居が決まるたびに発生する費用と考えて間違いはないでしょう。仲介手数料の計上は、物件を賃貸するための必要不可欠なコストとして認識されるため、税務上の経費処理が認められます。※不動産の実務上支払っているのが仲介手数料となっていない場合の方がお多いと言えるでしょう。

広告宣伝費の取り扱い

広告宣伝費も、経費として計上することができます。これは、インターネット広告やチラシ配布など、入居者募集に直接関わる広告活動にかかる費用であるという理解のオーナーさんが多いかと思いますが、実は管理会社側に支払っているのはこの広告宣伝費である可能性は高いです。

物品提供の経費計上

入居者募集の際に家具家電を提供するケースや、商品券などをプレゼントする場合の費用も、経費として計上可能です。これらは交際費として処理されることがあり、入居付け戦略の一環として利用されることがあります。

不動産購入時の仲介手数料

不動産を購入する際に支払う仲介手数料は、購入代金の一部として取り扱われ、その時点では必要経費とはなりません。”取得価格”に含まれる取り扱いとなっています。同じ仲介手数料でも賃貸の際に支払うものと、購入の際に支払うものでの取り扱いに違いがあることに注意が必要です。

通信費・旅費交通費の経費計上のポイント

「通信費」と「旅費交通費」は、事業運営に直接関連するものは経費計上できるというものです。

通信費の経費計上

不動産事業に関連して発生する通信費には以下のようなものがあります。

  • スマホ(携帯電話)やパソコンの購入代金
  • 携帯電話会社やインターネットのプロバイダーに支払う料金
  • 不動産投資に使用するソフトウェアやアプリの購入代金

これらの通信費は、不動産会社や管理会社との連絡手段、新たな不動産購入や情報収集のために必要な経費として計上が可能です。ただし、不動産投資以外の目的にも使用している場合は、その使用比率に応じた家事按分が必要となります。

旅費交通費の経費計上

不動産投資に関連する旅費交通費には、以下のようなシーンで発生する費用が含まれます。

  • 不動産購入に際しての現地訪問
  • 不動産会社や金融機関への訪問
  • 所有物件の状況確認や管理
  • 不動産セミナーへの参加

これらの活動に伴う公共交通機関の運賃、高速道路料金、自家用車のガソリン代、駐車場代、宿泊費などが経費として計上できます。物件を見に行くための移動費やセミナー参加費も、不動産投資に直接関連する費用として認められます。

自動車関連費用の経費計上

不動産投資に関連して発生する自動車の運転にかかるガソリン代やメンテナンス費用は、事業用としての使用比率に基づき経費計上できます。万が一の事故や故障でレッカーを利用した場合の代金も、不動産投資の活動に直接関連していれば経費として認められます。

経費計上のためには記録づけを習慣に

通信費や旅費交通費を経費として認められるためには、これらの費用が事業に直接関係があること、実際に支出が行われたことを証明する必要があります。そのためには、領収書の収集に加え、物件調査の概要書、調査時の写真、不動産業者の名刺、日程表などの具体的な記録を残すことが重要です。

セミナー参加費は?不動産の書籍購入は?

賃貸経営や不動産市場に関する知識を深め、より良い判断を行うために重要な役割を果たすための費用です。これらの費用は、不動産投資の効率性と収益性を高めることを目的としているため、経費として計上することが可能です。

書籍・新聞購読料

賃貸経営や不動産投資に関する書籍を購入した場合、その代金は経費として計上できます。

不動産市場や経済動向についての情報を得るために新聞を購読している場合も、経費に計上可能です。

セミナー参加費

不動産投資に関連するセミナーや講演会に参加するための参加費も、知識向上のための必要経費として認められます。

コンサルティング料

不動産投資に関する専門的なアドバイスを受けるために専門家に支払う費用も、経費計上が可能です。

コンサルティング料という名目を使って、何もかもを経費に突っ込むということで赤字にして税金を低くするという事で逮捕されている人たくさんおりますのでお気をつけください。

また、仲介手数料は上限が決まっていたり、仲介手数料をもらうことができない自ら売主の立場なのにコンサルティング料という名目にして報酬を取る不動産会社も多数ありますので、注意が必要です。

資格取得費用は認められない

よく勘違いされがちなのが資格取得のために資格予備校に通うことや、参考書、過去問などの購入です。

資格取得のための費用は、例え宅建の資格であっても費用として認められることはありません。

修繕費は少し注意が必要

「修繕費」は、賃貸物件の維持管理に欠かせない経費です。退去に伴う原状回復のためのリフォーム費用や、設備故障に伴う交換費用などがこれに該当します。

修繕費と資本的支出の違い

修繕費とは、物件の通常の使用に伴う摩耗や損傷を修理し、原状を回復させるための費用です。これに対して、間取り変更や設備の刷新を伴うリノベーションなど、建物の価値や耐久性を高めるための費用は「資本的支出」とされ、これらは資産として計上し、減価償却の対象となります。

経費計上の注意点

修繕の程度や種類によっては、単純な修繕費として経費計上できず、資本的支出として扱われる場合があります。たとえば、単に壊れた設備を修理・交換する場合は修繕費として計上できますが、建物の機能を向上させるような大規模なリフォームは資本的支出となります。

修繕費と資本的支出が混在するリフォーム工事の場合は、工事の種類や作業内容、使用される部材や設備ごとに詳細な見積もりを取得し、修繕費と資本的支出を適切に分類して計上する必要があります。この分類作業は、税務上の適切な処理を確保するために重要です。

まとめ

これらの経費項目を正確に把握し、適切に計上することは、不動産事業の収益性を最大化する上で欠かせません。経費計上が可能なものとそうでないものを正確に区別し、必要な記録や領収書を適切に管理することが、効率的な税務処理と賃貸経営の成功に繋がります。不動産事業において、これらの経費管理のポイントを抑え、賢い戦略を立てましょう。