Q
募集の時の賃料と管理費の分け方のルールってあるのでしょうか?自由に決められるのでしょうか?
A

実は、賃料と管理費の分け方については、特に厳密な法的ルールが定められているわけではありません。したがって、原則として自由に設定することが可能です。たとえば、極端な例として「賃料0円、管理費10万円」と設定することも不可能ではありません。もちろん、このような設定をする事業者はほとんどいません。

もう少し賃料と管理費の関係について深堀りしていきます。

なぜ賃料0円管理費10万円の物件がないのか?

「このマンションは管理費が高いから手入れがしっかりしているはずだ!」などと捉えられる方は一定数いることでしょう。それが正しい場合もあれば、全く当てはまらない場合もあります。

それであれば、冒頭のFAQの「賃料0円管理費10万円」といった物件こそ至高になりえるのですが、現実ではそういった物件は存在しません。まずは、賃料と管理費の割合は自由に決めらるにも関わらず「賃料0円管理費10万円」といった構成の物件がないのはなぜなのかを考えてみます。

結論からお伝えすると、賃貸の仲介手数料の基準が賃料となるためであると考えられます。

仲介手数料というのは、賃料の1ヶ月分というのが上限になっています。賃料が0円であれば仲介手数料も0円になってしまう。。。つまりすべての不動産屋さんが無賃労働をしなければならないという事になってしまいます。

敷金や礼金や更新料も「賃料の〇〇ヶ月分」といった形で決められているのが通常ですが、金額で定めても問題ないものでしょう。

敷金については、高齢者の居住の安定確保に関する法律において「家賃の3ヶ月を超えない額」と上限がある場合も定められていますが、一般の賃貸借契約では上限が設けられているものではありません。

(賃貸条件の制限)

第十一条 地方公共団体等は、毎月その月分の家賃を受領すること、終身にわたって受領すべき家賃の全部又は一部を前払金として一括して受領すること(法第五十二条第一項の認可を受けた場合に限る。)及び家賃の三月分を超えない額敷金を受領することを除くほか、賃借人から権利金、謝金等の金品を受領し、その他賃借人の不当な負担となることを賃貸の条件としてはならない。

高齢者の居住の安定確保に関する法律

不動産屋さんが知られたくない賃料と管理費の関係

ここでお伝えする方法は、閲覧数を増やすために意図的に管理費を高く設定する手法です。

閲覧数の多さは、現代の賃貸市場において非常に重要です。ほとんどのお部屋探しはWebを通じて行われるため、大手不動産ポータルサイトの検索機能はキーとなります。たとえば、suumoやアットホームのようなサイトでは、「管理・共益費込」や「管理費等を含む」という選択肢があり、賃料の検索は5,000円刻みで設定されています。

suumoの検索画面
アットホームの検索画面

「管理・共益費込」「管理費等を含む」というチェックボックスがあります。

さらに、suumoもアットホームも賃料が5,000円刻みの選択となります。

ここで考えてみましょう。もし「毎月11万円の賃料収入を得たい」と考えている貸主がいるとします。賃料を市場で競争力のある価格帯に設定することで、より多くの潜在的な入居者に目を通してもらうための方法は何でしょうか?その一つの答えは、賃料を「98,000円」と設定し、残りの「12,000円」を管理費として加算することです。これにより、10万円以下で物件を探している人々にも目に留まる可能性があります。

もちろん、一見すると予算オーバーに見えるこの方法に対して、無意味ではないかと感じる人もいるでしょう。これは、例えば飲食店の経営者が「一度食べてもらえばわかるのに」と訴える状況に似ています。物件の魅力を知ってもらうためには、まずはその物件を多くの人に見てもらうことが重要なのです。

管理費を市場の相場よりも著しく高く設定することは、物件の魅力を損ね、不信感を招くリスクがあります。そのため、実際に管理費を調整する際には、市場の相場を理解し、バランスを適切に取ることが重要です。

不動産の賃貸の現場で日々物件情報を見ていると、管理費・共益費が高額な物件は、やはりエレベーターが着いていたり、24時間ゴミ捨て可であったり、コンシェルジェがついていたりする事が通常です。

管理費と共益費の違いとは?

共益費と管理費は、ほぼ同じような費用であり、どちらも賃貸物件の運営に必要な経費として入居者から徴収されます。しかし、それだけだと「なんで?」と言われてしまうので、細かく見てわずかな違いを探しています。ただ、実際にはそれらを正しく区分けして考える不動産屋さんはいないものと捉えておいたほうがよいでしょう。各々が育った不動産屋さんの慣習を引き継いでいるだけかなというのが、昨今の不動産屋さんから感じているところです。

共益費
  • 目的:物件の共有部分の維持管理に関わる費用。
  • 内容:エレベーター、オートロックシステム、共用部の清掃、外灯の電気代など。
  • 特徴:物件の設備が充実しているほど、または新築物件で高く設定されることが一般的。

言わんとしていることは、部屋のことよりも建物全体にかかる費用ということでしょう。

共益費
  • 目的:物件の管理業務全般に関連する費用。
  • 内容:物件管理会社による入居者サポート、契約管理、緊急時対応、物件の長期維持計画など。
  • 特徴:管理費は物件の管理を行う会社が提供するサービスに対する対価として支払われる。

それに対して、管理費は部屋自体の管理のための費用ということでしょう。

繰り返しになるのですが、これらを明確に区別して説明して顧客を納得させることができる不動産会社はないであろうと断言できます。

確定申告の時には?

賃貸の条件としての賃料、管理費、共益費の違いはひとことで言ってしまえば全部をまとめて「賃料」と捉えてしまってよいくらい区分けのないものでした。

しかし、確定申告の際に振り分ける勘定科目には注意する必要があります。

“管理費”と一言で言ってしまうと分譲マンションにお住まいの方であればわかるかと思うのですが、「修繕積立金・管理費」という出費があります。この”管理費”は管理組合に支払った管理費であり、賃料と管理費をどうわける?という時の管理費とごっちゃにしてはならないことに注意が必要です。

収入の記帳時には、賃料と管理費、共益費をわける必要がなく、すべてを一括りで「売上」または「受取家賃」などにするのが通常です。

支払う管理費とごっちゃにして、入居者からの管理費を預り金として、支払う管理費でそのままプラスマイナスゼロとするようなことは認められないであろうと考えられます。

まとめ

この記事では、賃料と管理費の設定の自由度、賃料0円の管理費10万円という極端な例の現実的な考察、および不動産屋が使用する様々な戦略について詳しく解説しました。これらの情報をもとに、あなたが賢い賃貸選びをするための判断材料を提供することが目的です。不動産に関する更なるご質問や相談があれば、いつでもお気軽にお問い合わせください。私たちはあなたの不動産選びを全力でサポートいたします。