不動産屋さんを選ぶ基準のひとつとして、「免許番号の()を見ろ」というのがありました。

例えば私たち株式会社iedokiの免許番号は東京(1)第103480号です。この(1)を見ろと言われていました。不動産の管理会社を選ぶ際には、見るべきところはそこではなく、賃貸住宅管理業の登録の有無を見るべき時代となっています。なぜ、宅建業の免許番号ではなく、賃貸住宅管理業の登録の有無を見るべきなのかについてお伝えします。

宅建の免許番号の意味

宅建業の免許番号の()内の数字は更新した回数になります。今は5年に1回更新となるので、(2)であれば5年以上は続いており、(3)なら10年以上は続いているという事がわかるようにできています。

そんな宅建業の免許はあくまでも仲介をするための免許です。

賃貸物件を管理を適正化するために令和3年6月15日からその登録制度が開始されました。それが"賃貸住宅管理業"の登録となります。賃貸の管理を任せたいと不動産屋を探す時に見るべきはこちらの情報になります。

賃貸住宅管理業の登録事業者数は1万社未満

令和6年1月時点で賃貸住宅管理業の登録業者数の統計値を見つけることはできませんでした。

そのため、賃貸住宅業者検索から手作業で集計した数値になります。

令和6年1月時点の賃貸住宅管理業に登録している事業者数は9,335社でした。なお、この登録制度に移行する前に国土交通省が掲げていた目標値は6,000社程度の登録でした。その数は上回っていますが、全国に宅建業者が13万社ある事と比較すると大きな開きあると感じるのが普通でしょう。

なお、都道府県別の割合は下記のとおりです。東京だけずば抜けて業者数が多かったです。

賃貸管理業法ができた経緯

借主または貸主から依頼を受けて入居するまでのお手伝いの媒介業務は宅建業法にて細かな規制が定められていました。それに対して、賃貸の管理業務については取り締まる法律がありませんでした。その取締をするための法整備がなされたという経緯です。(サブリースについては割愛)

登録しなければならない業者は?

200戸以上の管理物件がある業者は、宅建業者に関わらず登録が義務付けられています。200戸のカウントの仕方は業者以外には関係のない話となるので割愛します。200戸ない業者でも登録は一定の要件を満たす必要はありますが、任意で行うことはできます。

賃貸住宅管理業者に求められることは

賃貸住宅管理業法において、法律が賃貸管理業者に求めることは大きく下記の5つに分類することができます。

賃貸住宅管理業法が業者に求める5つの事
  • 定期報告
  • 業務管理者の設置
  • 賃貸管理を行う上での重要事項の説明
  • 資産管理
  • 維持保全

賃貸住宅管理業者の資産要件

上記5つの中で、不動産大家さんであるあなたにとって、賃貸住宅管理業者に登録されているところを選べば安心できるというポイントは"資産管理"部分になります。

まずは、賃貸住宅管理業者に登録されるためには最低限の資産要件があります。

賃貸住宅管理業者登録のための3つの資産要件
  • 直近の事業年度における貸借対照表が債務超過の状態にないこと。
  • 直近2期の事業年度の損益計算書において、2期連続で当期純利益が計上されていること。
  • 直近の事業年度の貸借対照表が債務超過の状態にあった場合、負債の部から、役員からの借入金を控除することにより、資産の額が負債の額を上回ること。

言い回しは難しいですが赤字経営が続いているような会社の登録はすることができないものにはなっています。

小さな会社に任せるという時に誰しもが感じる不安は「この会社が潰れるんじゃないの?」になるかと思います。この資産要件をクリアできているからといって、その会社が潰れないという保証はひとつもありませんが、資産要件がない宅地建物取引業の免許しかない不動産屋よりかは幾分も安心できると言えるのではないでしょうか。

財産の分別管理

こちらの財産の分別管理の方が不動産大家さんであるあなたを安心させるものになるかと思います。

賃貸の管理をしている場合、不動産屋さんが敷金を貸主の代わりに預かる事は少なくありません。

信じられない事かもしれませんが、その敷金を事業の運用資金として使い込んでしまうという不動産屋さんの報告が複数なされていました。

そのような事にならないように、敷金のみならず、預かった家賃なども事業用の資金とは明確に分別して管理する事が義務付けられています。

定期報告義務

これから、自分の部屋を貸し出そうと検討されている方からすると信じられないことかもしれませんが。。。賃貸の管理を依頼されて全く連絡をしなくなる不動産屋さんというのも少なくありませんでした。

それを義務化しなければならないというのは少しさみしい事ではありますが、賃貸住宅管理業に登録している業者であれば、その点は考慮せずとも1年に1回報告が来るものと安心材料のひとつにしていたければと思います。

定期報告すべき事
  • 家賃等の金銭収受状況
  • 設備の維持保全の実施状況等
  • 入居者からの苦情の発生・対応状況

重要事項説明

賃貸物件に入居する時、家を購入する時などに宅地建物取引士による重要事項説明というのを受けた事があるかと思います。たいていの不動産会社は、ここはしっかり行っています。

これが賃貸の管理になると、全く細かな説明がないまま管理の契約までもがいつのまにか始まっていて、解約するには違約金がたっぷり取られて解約できないといった事が多発していました。あまり問題が表に出てこないのは、裁判をしても費用倒れになってしまいそうだからとしょうがなく管理委託契約を継続しているという人が多数なためです。

そういった事がこれからは起こらないように、メリットのみならずデメリットもしっかりと重要事項にて説明すつことが賃貸住宅管理業に義務付けれるようになりました。また、あとで「言った言わない」論にならないように、口頭の説明のみならず書面(PDFとかも可)の交付も必須とされました。

賃貸住宅管理業法の物足りないところ

と、賃貸住宅管理業に登録している業者だから安心できるということを伝えてきましたが、宅建業と比較して明らかに物足りないところは多々あります。

資産要件を賃貸住宅管理業の登録要件としたのですが、依頼しようとする人がその業者を調査するための閲覧できる情報が少ないという点です。

宅建業者は、公開される情報が広範です。「取り扱った件数は何件?」というのが、賃貸も売買でも明らかにされます。貸借対照表、損益計算書は上場会社でもないのに、誰しもが閲覧できるような形になっていたりします。

賃貸住宅管理業者においては、まだその閲覧についての範囲が狭いです。

業者名と住所と登録番号くらいしか有益な情報が得られないというのが現状です。

今後はどのようになるのか未定ではありますが、宅建業法ほど広範な閲覧ができるようにはならないでしょう。理由としては、賃貸住宅管理業の登録のためには、書面による登録申請を原則受け付けていないのでデータでしか役所側が業者の情報を持っていないためです。宅建業は書類申請が前提で、その書類をそのまま閲覧に供しているだけなので。日本の役所が申請された一部のデータだけを一般の閲覧に供するようになどというリスクのあることをするとは考えられないので。

宅建業よりも、むしろ賃貸住宅管理業者の方が日々の取引を見れるような状態にしたほうがよいと個人的には考えているのですが、実現は難しいでしょう。

まとめ

。賃貸住宅管理業者には、資産要件の遵守、財産の分別管理、定期報告義務、そして重要事項の明確な説明など、さまざまな厳しい基準が設けられています。

これらの要件は、賃貸物件の管理を任せる際の大切な判断基準となります。

ただし、賃貸住宅管理業法にはまだ改善すべき点があり、特に業者情報の公開範囲の拡大が求められています。この記事が、賃貸物件の管理に関する重要な側面と、適切な不動産屋の選び方についての理解を深める一助となれば幸いです。