相続はある日突然訪れます。自分の親が死亡したというのに悲しんでいる暇もなく次から次へとやらなければならないことが襲って来ます。

自分の父親が賃貸アパートなどを経営していて、それを相続することになったらどうすることになったら一般の方々よりも考えなくてはならない事が更に多くなってしまいます。

賃貸物件の貸主としての地位の相続について気をつけるべきことをお伝えします。

貸主の地位を相続

まず、部屋を貸し出している賃貸人の地位が相続の対象になるのか否かについてお伝えします。

結論をお伝えすると貸主の地位は相続の対象となります。ここで、「法定相続分は~」という説明も挟んでしまうととてつもなく長くなってしまうので、貸主の地位を相続した場合の手続きの流れをお伝えします。

1
賃貸条件の整理

貸主としての地位を相続すると、賃貸物件に関する権利義務も引き継がれます。まずは契約内容を確認し、賃料の額、契約期間、未払い賃料などの債権債務関係を把握してください。
また、もしもローンなどを組んでいるようであればその借金も相続の対象となります。
ローンについては団体信用生命保険の確認などがありますが、今回は説明を割愛します。

2
相続が発生したことの通知

相続が発生したことを賃借人に通知し、必要
特に注意すべきは賃料の送金先についてです。
相続が発生すると銀行口座凍結されてしまいます。賃借人がその凍結された口座に賃料の送金を継続させないように速やかに通知をしてあげましょう。この時点ではまだ誰が相続するのかが決まっていなければどこかでお金をプールしておいてもらうか、代表の口座を作成するのが好ましいです。
ただし、賃料の送金先がコロコロと変わってしまうことは賃借人にとって大きな負担となるので、変更回数は限りなく少なくなるようにしてあげる気遣いは必要であると言えます。

3
遺産分割協議から相続登記

誰が明確に相続するのかを遺産分割協議で決めて相続登記を行います。
誰かひとりが相続する形でもよいですし、相続人が複数いて、それぞれが法定相続分通りの共有の形でも問題ないかとは思いますが、賃料の送金口は一箇所にまとめるというのが通常です。

4
新たな契約書の作成

既存の契約がそのまま継続されることが多いですが、相続人が承継したことを明確にしておくために、新たな契約書を作成することが望ましいです。これにより、将来的なトラブルを避けることができます。
これは必ずしも行わなくてもよいものではあります。

5
賃料の管理と支払い先の変更

共有であれば、相続人代表を設定して、賃料の支払いを一元管理していたものを各相続人でどのようにわけるのかま決めておくことで後々の相続人間のトラブルを防ぐことができるでしょう。

問題は賃料の送金先

貸主の地位を誰が相続するのか?遺産分割協議をどうするのか?相続税の支払いどうするのか?などの問題は、相続人間つまり親族間の問題になります。

その相続の問題で、普通にくらしている賃借人に迷惑をかけるということは可能な限り避けたいところです。

とはいえ、どのようなところで迷惑がかかるかというと、家賃の支払いがどのようになるのか?というところになります。

賃借人が家賃の支払い方がどのような形だったのか?によって家賃の取り扱いは変わります。

賃借人の家賃の支払い方は大きく4つにわかれると言えます。

  1. 賃借人が直接貸主に振込んでいる
  2. 賃借人が管理会社に振込んでいる
  3. 自動引落で管理会社を経由して貸主に送金している。
  4. 自動引落で保証会社から直接貸主に送金している。

管理会社がお金を預かる方法

2,3の場合は、遺産分割協議が完了するまで管理会社に賃料を預かっておくというのがよいと考えています。遺産分割協議が完了して誰が貸主になるのか確定してからまとめて賃料を送金するという形であれば、借主への迷惑はほぼかからず進めることができるでしょう。

4の場合は、保証会社が家賃を預かっておいてくれる可能性は低いと考えています。その場合、保証会社の手続きで、相続手続きが完了するまで賃料をしばらく管理会社に送金しておいてもら、相続手続きが完了したら保証会社からの家賃の送金先の変更を行えばよいだけになります。これにより入居者の関与をほぼ必要とせず、手続きを完了することができるでしょう。

賃借人が直接振込む時は要注意

1の賃借人が貸主に直接家賃を送金する方法のときが一番注意が必要です。

先程の相続のステップバイステップの流れはこのパターンを想定してのものになります。

相続人がA,Bといたとします。

「父が死亡して口座が凍結されちゃったからAに賃料を送金して」と一度決めたにも関わらず、のちのち遺産分割協議で「やはりBが相続することになったから今後はBに賃料を送金して」と短期間の間に何度も賃料の支払い先が変わるような事態だけは避けるようにするべきであると考えています。

賃料の送金先が変わるだけならまだよいのですが、揉めている相続案件ですと、Bから「賃料を勝手にAに送金するな!」と言われてしまう可能性も少なからずあります。

賃料の送金先の変更は多くても1回だけになるように相続手続きを進めましょう。

いずれにせよ、大半の賃貸管理会社が相続についての理解までを持っていないというのが日本の不動産業会の現状です。

不動産を賃貸に貸し出そうとする時に、管理会社を選ぶ基準のひとつとして「相続手続きにも詳しい賃貸管理会社」も考えておくのがよいでしょう。

「相続なんて自分にはまだ先のことだ」と思われている方が大半かとは思いますが。。。年間100件ほどの相続案件に携わっていると、ついついその人がお亡くなりになったら。。。と死亡前提で物事を考えるようになってしまっていたりします。

備えて損をすることはないかと思いますので、頭の片隅でにも置いておいてください。

まとめ

相続は突然に訪れることが多く、それに伴う法的および財務的責任は重大です。このため、不動産賃貸業を運営している場合、予め相続手続きに通じた専門家と連携し、事前に準備を整えておくことが望ましいです。不測の事態に備えて、相続に関する基本的な知識を身に付け、適切な賃貸管理会社を選定しておくことも、スムーズな運営に繋がります。