はじめて自宅を貸し出そうとする方が、「この部屋はいくらで貸し出すことができるんだろう?」と気にされるのは当然です。

家賃の相場のために、誰しもがやることであることなのですが、一方で、不動産屋の立場からは「それはあまり参考にしすぎないほうがいいですよ」という事があります。

それはsuumoやHOME’S、アットホームなど、いわゆるポータルサイトの情報を参考にするという事です。

なぜ、ポータルサイトの情報を参考にする事が、賃料の相場を調べるために必ずしもよろしくないのかについてお伝えします。

ポータルサイトは各不動産会社が物件を掲載している

suumoやHOME’S、アットホームなどを不動産屋さんであると勘違いしている人が少なからずいます。

これについての詳細は割愛しますが、これらは不動産会社ではなく、不動産会社が紹介したい物件を掲載するスペースをWeb上に提供してくれている会社です。(Web上に限りませんが)

その提供されているスペースに全国の不動産屋さんがせくせくと物件情報や画像を、それらの会社が提供しているWebスペースに載せているというものです。そういったスペースを提供しているWebサイトのことを”ポータルサイト”と呼びます。

例えば、本日のHOME’Sには199,795件の新規登録があった模様です。これは全国の不動産屋さんの従業員が登録しています。総登録物件数は5,691,605件あるようです。

ポータルサイトに広告される物件のでどころは?

ここからが不動産業に従事したことのある人でないと想像するのが難しいところなのですが。。。

登録されている物件すべてが異なる物件にはなっていません。同じHOME’Sのとある物件を見てみると、「この物件を取扱う会社が5社あります」と書かれています。

つまり、総登録件数が約570万件あっても、相当な数の重複があります。

では、その5社はどこの情報を元にHOME’Sに掲載をしているのでしょうか?

結論をお伝えすると、不動産会社同士で紹介しあっているサイトがあります。一番代表的なものは”レインズ“というのがあり、なんとなくは聞いたことがある方も少なくないでしょう。

この不動産会社同士の紹介の中で、「おっ!この物件いいな!」と思ったものが、ポータルサイトに掲載されている物件の大半なのです。

相場よりも安い物件が多く残る

不動産屋さんが「おっ!これいいな!」と思うということは。。。その物件は同条件の物件相場よりもちょっと安いからこそ「いいな!」と感じるわけです。毎日不動産の情報とにらめっこしている人たちが「いいな」と思う物件です。つまり、相場よりも安めの物件がポータルサイトには集まってしまっているというのが現実なんです。

減らないおとり物件

不動産屋さんが「いいな!」と思う物件が多く乗りがちというだけであれば、まだよいのですが、現実はもっとひどい状況です。賃貸の東京エリアに限っての話ですが、ポータルサイトに載っている4割はすでに申込が入っていたり、契約済みであったり、入居済みの物件だったりします。

公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会が調査(2021年)した結果12.2%程度との調査結果だったとのことですが。。。

公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会が2021年2月25日に発表した大手賃貸不動産サイトを対象におこなった調査結果によると、12.2%の割合でおとり物件が掲載されていることが確認されています。

HOME’Sの顧客調査で、「おとり広告に遭遇した」という経験をしたことある人は46.8%という結果が出ています。経験があったという結果なので、必ずしもおとり広告の数と=にはなりませんが、不動産の現場にいて体感する数値として、「ポータルサイトの半数はおとり広告だよ」と言われたら、「あぁそうだよね。」と納得してしまう体感値です。

不動産屋の相場感と顧客の相場感のズレ

おとり広告として残る物件というのは、そのままですが、”おとり”としての効果の強い物件であるというのは想像できるでしょう。全く誰も寄り付かない物件は”おとり”にもならないわけですから。

“おとり”としての効果が強い=相場よりも安い物件です。

そもそもが、不動産屋さんが「おっ!これいいな!」と思う物件ばかりが集まって、その中で更に”おとり”として効果の強い物件ばかりが残ってしまっているというのがポータルサイトの現実です。

そんな物件ばかりを見ている人と、不動産屋同士の紹介しあっている本当に存在する物件だけを見ている人と、相場感がズレてしまっているという傾向がとても強くなっているなと感じます。

借りたい人は少しでも賃料が安いのが嬉しいわけなので、相場感が低くなりがちで、「そこに住むことができるであろう」という感覚のズレが生まれてしまうので、影響がとても大きいです。

貸主となるあなたは賃料を高くしたいわけなので、相場感が低くても大きな影響はないと言えます。

ただ。。。半分以上も存在しないであろう”おとり物件”のサイトの情報を元にしたいと考えますか?

ポータルサイトの情報はあくまでも参考情報として、一歩退いた姿勢で眺めるのがよいです。

不動産屋の賃料算出方法は?

では、不動産屋さんはどのように賃料を算出しているのでしょうか?

賃料算出の方法は主に下記3つの方法があります。

  1. 原価法
  2. 収益還元法(DCF法)
  3. 取引事例比較法

大半が3の取引事例比較法になるので、他の方法についての説明は割愛します。

名前のとおり、類似の取引の事例を見て賃料を算出します。一般の方々と違うところは”実際に契約に至った数字“を見ることができています。

仮にポータルサイトの物件がすべておとり物件ではない、物件だったとしても、その先に交渉などがはいりその公開されている賃料で契約に至ったのかどうかというのを比較することはできません。

不動産屋さんの賃料査定は、実際に成約に至った賃料のデータを元にしています。

閲覧数分析

その他に募集中の段階でも私たち不動産屋さんは、その物件がどれくらい閲覧されているのか?を随時見ることができています。下記はsuumoの場合の例です。

水色の折れ線グラフはそのエリアの平均の閲覧数で、緑のグラフは実際の閲覧数です。

上記の場合はエリア平均を大きく下回っているので何かしらの調整が必要な物件であるということがわかったりします。

これはごく一部でもっと細かなデータを見ることができます。それにより、その賃料が適正であるのか否かを多方面から分析をする事ができています。

まとめ

このように、ポータルサイトの情報は必ずしも現実の市場状況を反映しているとは言えないというのが現実です。

賃料設定においてポータルサイトの情報をあてにしすぎると、相場感にズレが生じて、大家さんとして、収益が小さくなってしまう可能性があります。

市場の最新動向、地域の特性、物件の状態といった多角的な視点から、適切な賃料を提案してくれる不動産屋さんを頼ってみてください。

不動産屋さんは賃料設定だけでなく、契約条件の交渉、物件の宣伝など、賃貸ビジネスを成功させるためのさまざまなサポートを提供してくれます。

専門家の意見を参考にすることで、適切な賃料設定が可能となり、物件の魅力を最大限に引き出しながら、安定した収益を得ることができるでしょう。

ポータルサイトの情報を参考にしつつも、最終的な意思決定には不動産屋さんの知識と経験を活用することを推奨します。