自宅を貸しに出そうかなという時に、なかなか空室が埋まらないから「ペット飼育を可にしてはどうだろう?」と考えることは数多くある空室対策のうちのひとつです。

ただ、分譲マンションですと、自分の部屋はペットを自由に飼育してくれてもよくても建物全体のマンション管理規約にてペットの飼育に対して制限があるということは少なくありません。

これは実際にあった話なのですが、オーナーさんはペット飼育可で募集されていたところに入居された方がいらっしゃったのですが、建物の管理人さんにペットのことを聞いたら「ここは建物自体ペットを飼育することが禁止されているよ」と言われ、入居してからペットを飼育する事ができない事が発覚した建物がありました。

そのような事態にならないように、どのようなことに注意をすればよいのかについてお伝えします。

また、こういったマンションの管理規約でペットを制限されることは肯定する裁判が数多くあります。

どのような裁判だったのかも簡単にお伝えします。

分譲マンションでは管理規約がすべて

分譲マンションの多くは、建物の共有部分や他の住人の生活の質を守るために管理規約を設けています。

ペットの飼育に関する規定も、この管理規約の中で大枠が定められており、ペット使用細則でより細かなことを規定していることが一般的です。

管理規約で「ペット不可」となってしまっていたら、そこで試合終了です。

ペット不可となっていても、ハムスターなどの小動物、熱帯魚などは許可されている場合が一般的です。

いずれにせよ、賃貸に出す際に入居者にペット飼育をオーナーさんが許可をしたとしても、管理規約で禁止されてしまっていたらそちらの方が強くなってしまいます。

管理規約の役割

管理規約や使用細則など聞き慣れない言葉が出てしまいました。簡単な説明をします。

管理規約の法的位置づけ
  • 管理規約は、区分所有法に基づき、マンションの管理組合や区分所有者が自主的に設定する内部規則です。
  • これらの規約は、区分所有者間の権利と義務を具体的に定め、共有部分の利用や個々の区分所有空間での行動基準を規制します。

規約に違反した場合、管理組合は違反者に対して規約の遵守を求めることができ、必要に応じて法的措置を取ることも可能です。例えば、規約違反してペットを飼育している区分所有者に対して、飼育の停止を求めることができます。

ペット飼育の規制と管理規約
  • マンション内でのペット飼育については、通常、管理規約によって具体的な規制が設けられます。
  • 管理規約は、区分所有者全体の合意に基づいて定められ、これによりペットの種類、数、飼育場所、飼育に関する行動規範などが規制されることが一般的です。

私の実家の分譲マンションで実際にあったことなのですが、「小型犬や猫は飼育可能だが、ペットは2匹まで」という制限が含まれていました。

さらに、ペットを飼育する際には、移動時にペットをケージに入れることが義務付けられ、更にペットの建物内での移動の際はエレベーターの使用を禁止されたりしていました。新築時から入居しており、15年くらい経過してから後付で決まった制限でした。

民法、区分所有法、管理規約の相互作用

区分所有法は、民法の基本原則を補完し、分譲マンションという特殊な環境に特化した規制を提供します。

管理規約は、区分所有法が設ける枠組みの下で、具体的な運用規則を定めることにより、建物の円滑な管理と区分所有者の共生を可能にします。

この規約は、区分所有法の枠組み内変更が可能であり、住民のニーズや建物の特性に応じて適宜更新される必要があります。

ペット飼育と管理規約と裁判例

東京高判/平成6年8月4日の裁判があります。

すでに犬を飼育しているにも関わらず管理規約が改定されてペットを飼育していいることが規約違反になったということで、飼育していた人が訴えたという事例です。

被告の主張
  • 管理規約に基づくペットの飼育禁止は無効であると主張。
  • 飼育禁止が共同の利益に反する行為に当たるとは限らないと主張。
  • 規約改正の手続きに問題があるため、無効であると主張。
  • 特に、ペットの飼育は特定の個人に必要な場合があるため、全面的禁止は不当であると主張。
管理組合の主張
  • 管理規約によりペットの飼育は禁止されており、この禁止は有効であると主張。
  • 飼育禁止は、マンションの共同の利益を保護するために必要であると主張。
  • 規約改正は適切に行われ、その手続きに問題はないと主張。

裁判所の結論

裁判所は管理組合の主張を全面的に汲み取り、ペットを飼育していた方に対しての歩み寄りは一切なかったと感じ取れる内容でした。

裁判所の見解
  • 管理規約の改正は有効であり、控訴人のペットの飼育は管理規約違反行為であると認定。
  • 「共同の利益に反する行為」として管理規約により禁止された行為であるため、訴えは認められる。
  • 規約改正の手続きについては、控訴人の主張する瑕疵や無効事由は認められず、原判決の手続きが正当であると裁定。
  • 動物の飼育を禁止することにより特定の個人に不利益を与えるものではなく、共同住宅の管理規約として合理的であると判断。

ペットの飼育を可能としたい場合

禁止することができるのであれば、逆に建物全体でペット不可だったものをペット可に変更することもできるはずです。その流れもざっくりとお伝えします。

1
現行の管理規約の確認

管理規約を確認し、現在のペット飼育に関する規定がどうなっているか把握します。

2
管理組合との協議

管理組合や理事会と協議を行い、ペット飼育についての意見やニーズを集めます。
飼育可能なペットの種類や数、共用部での取り扱いなど、具体的なルールの提案を行います。

3
飼育細則の草案作成

ペット飼育の細則を草案として作成します。この中には、飼育可能な動物の種類や数、管理方法、共用部での注意事項などが含まれます。

4
総会での承認

草案をマンションの総会に提出し、住民の投票により承認を得ます。
国土交通省のマンション標準管理規約によると、ペット飼育のルールは総会での承認が必要です。

5
細則の正式な導入と登録

承認された飼育細則を正式にマンションの管理規約に追加し、必要に応じて届出や登録のプロセスを設けます。

自分のためならいざ知らず。。。これから入居するかもしれない人のためにマンションの管理規約を変えようとまで考える方はごく少数であるとは思われますが。。。もしも、建物の管理規約を変えて「ペット可のマンションにしたい!」「ペットの猫のみという制限を外したい!」と考えられる方がいらっしゃいましたら、私たちの方では「規約の草案」の作成のお手伝いはできますので、お声がけください。

まとめ

ペットの飼育ができる賃貸物件は、特にペットを飼うことを望む入居希望者にとって魅力的な選択肢となります。しかし、分譲マンションにおける賃貸では、建物全体の管理規約に従う必要があり、これにはしばしばペットの飼育に関する制限が含まれます。管理規約でペットの飼育が禁止されている場合、個々のオーナーがペット飼育を許可しても、それを実現することはできません。

これから自宅を賃貸に出すことを検討しているオーナーさんがいらっしゃいましたら、是非、私たち賃貸管理会社にご相談ください。そもそもマンションのペット飼育の可否、条件がどのようになっているのかさえ知らないという方も少なくありません。

「ペット飼育可にすれば賃料高く貸せますよ!」と甘い言葉ばかりを囁いて管理規約を確認もしない賃貸管理会社というのが確かに存在します。実際に被害にあいました。。。(結果入居者さんに損害賠償をして解決しました)

そういった賃貸管理会社を選ばないように、まずは、いろいろな不動産屋さんの話を聞いてみましょう。