空家問題については、もはや説明の必要もないほど、日本全国がその重さを感じています。しかし、この長年の課題に対して、ほんの少しだけ光が差し始めました。

空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(改正法)が令和5年12月13日に施行され”再建築不可”の建物を利活用できるように建て替える事ができるような可能性を感じる事ができています。

「再建築不可の接道義務要件緩和されるのでは!」といった期待を感じる事ができている”空家等活用促進区域“の創設についてお伝えします。

空家問題と具体事例

空家が全国にどれくらいあって、2030年にはどれくらいが空家になるのであろうといった数字の類はもはや報道され尽くしていることかと思うのであえて割愛します。

ただでさえ、長ったらしい法律名で、どれもこれも似たような漢字なので区別がつきづらいので、”空家等活用促進区域”の説明に注力します。

空家は地方だけの問題となるであろうと思われていることかと思いますが、東京都の北区でも2024年早々に行政代執行発動の必要性のある空家があったりしました。

崩壊寸前の空き家解体 東京都内で代執行 「負動産」のリスクとは

20年間空家状態が続いていたとの事です。

こういった物件の救世主として多いに期待されているのが”空家等活用促進区域“です。

再建築不可物件

東京都内で代執行発動されたのは、北区岩淵町というエリアです。岩淵町あたりは小さな戸建てが密集して大きな車では曲がりきれないところが複数あるという場所になります。赤羽駅というそれなりに大きくにぎやかな駅が最寄り駅です。

私たちは相続事業も行っているので、相続人が9名いる上に皆が高齢者となってしまっていたため、手続きがどれくらい大変かというのも想像できます。

それでも、不動産屋の視点からは、代執行で取り壊された家はそれなりに価値がありそうなのになと感じる場所です。不動産屋からも「売ってください」「活用しましょう」という営業がそれなりに来ていたのではないかと想像できます。

しかしながら、このような結果になったのは「活用が困難である」という事からであったものと思われます。

「活用が困難」な原因のひとつとして建築基準法による制限が大きかったのではないかと思われます。

物件の詳細や相続の内部事情までは全く把握できていないのですが、”家の前の道路は道幅が狭く、重機が入らないため、今後は手作業での解体作業になるという。”とある事から目の前の道路はとても狭い事がわかります。

建築基準法では、建物を建てるために道路に接していることを条件としています。(幅員4m以上の道路に2m以上接道)今回の物件はあきらかにその要件を満たしていなかったことでしょう。

そういった物件を不動産業界では”再建築不可“物件などと呼びます。

建物を取り壊してしまったら、再度建物を建てる事ができなくなってしまうので、そこに残るのは土地だけで、何にも活用できなくなってしまいます。そのため、「取り壊すのは待った方がいい」というアドバイスを相続人の方々は受けたこともあったことと想像します。

そういった物件でも特定の条件を満たせば再度建物を建て直すことができたり、店舗など他の用途に使う事ができるようになったりできるかもしれないというのが、空家等活用促進区域というわけです。

「おそらくこの活用がこのままでは広がることがないだろうな」と個人的に感じてはいますが、これを基に少しずつ柔軟な対応ができるように形を変えていくのではないかと期待しています。

空家等活用促進区域に

再建築のための接道要件が緩和されたり、建物の用途変更ができるようになったり、市街化調整区域の用途変更の期待があるのですが、長年積み上げてきて、作られた規制なのでそう簡単に緩和されるものではありません。

まずは、その空家がある場所に”空家等活用促進区域“となる必要があります。これは個人でどうにかできるものではなく、市区町村が決める事です。そのための流れを見るだけで「あぁこれはダメそうだな。。。」と感じるところがあります。

空家等活用促進区域となるための流れ
  1. 空家調査(把握)
    空家特区の指定及び更新時に区域内の空家調査を実施し、空き家を特定(把握)します。
  2. 空き家の課題の把握
    空き家により地域が抱える課題(放置空き家の増加、活力の衰退、生活利便性の低下など)を整理、把握して、これらを情報共有します。
  3. 空家特区指定の申出案の作成
    地域が目指す将来像、空き家の活用方針などを検討、共有し、その実現に向けた申出案を、市と協働で作成します。
  4. 地域の合意形成
    空家特区の指定による規制緩和は、周辺の居住環境や生活環境に影響(交通渋滞や騒音、ポイ捨て等)を及ぼす場合があるため、申出について地域住民や空き家所有者への合意形成を図っていただきます。(合意割合の目安:区域内の住民及び空き家所有者の2/3以上)
  5. 市が空家特区の計画(案)を提出
  6. 市が県に空き家特区の計画(案)を提出
  7. 県による審査
  8. 公告・縦覧
  9. 審議会の意見徴収
  10. 特区指定

引用元

なお、国土交通省はこの区域に指定される数を施行から5年間で100区域を目標としているようです。

敷地特例適用要件

“空家等活用促進区域”となった上で、接道規制の緩和が現実的になるのかどうかという判断に進む事ができます。そういった接道規制の緩和されるための敷地の特例が認められるのか否かの判断基準があります。

敷地特例適用要件としては、促進区域内の市街地環境に応じて、建築物の建物構造、規模、用途等を規定するとともに、建築基準法上の道路に代えて将来にわたって安定的に利用することが可能な道であることを担保するための条件を規定することが必要となります。

空家等活用促進地域のガイドライン

そもそも、なぜ再建築するためには幅員4m以上の道路に2m以上接道していなければならないかというと、火災があった時に消防車が入っていけるようにという考えがありました。

それを前提として考えて敷地特例の適用条件を考えると。。。よほど活用用途が明るい未来出ない限り無理であろうなというのが現在地です。

先程紹介した東京都北区の代執行があった物件がこの敷地特例の要件を満たしているということは現実問題としては考えづらいです。

国土交通省のガイドラインでは”建替えが容易に”となっているのですが、それはさすがに言葉の使い方を誤っているのではないかと感じます。”可能になった”程度にとどめておくべきだったのではないかと。

市区町村が活用指針に定めた「敷地特例適用要件」に適合する空家は、前面の道が幅員4m未満でも、建替え、改築等が容易に。

空家等活用促進地域のガイドライン

最後に

空家等促進区域の敷地特例、つまり、幅員4m以上接道2m以上の要件を満たしていない再建築不可物件でも建て直すことが容易になったのではないかという点のみについて絞ってお伝えしました。

空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律では、他にも市街化調整区域の空家をお店として活用することができるようになったり、空家をカフェやコンビニなどに活用することが容易になったりする事が盛り込まれています。

どれもあくまでも可能性という事で、現在市街化調整区域の誰も住まなくなった不動産を相続したりしてお困りの方の問題をすぐに解決できるようなものではありません。少しだけ光明が見えたかなという参考程度の情報となり恐縮でございます。

まず、最初にやるべきは、この長ったらしい法律名をシンプルにすることだなと強く感じています。