賃貸の管理会社を選ぶ時に、大手かそれ以外かで悩まれる方は少なくないはずです。

ベンチャーならではの、ひとりひとりの好みに合わせたサービス設計みたいなのが好きだけど、会社が潰れたらどうなるんだろう?

という不安から大手を選ばれる方は少なくないでしょう。特に管理会社となると敷金をはじめ安心して"お金を預ける"事ができる会社である事は賃貸管理会社選びで最も重視すべき点となる事でしょう。

不動産の賃貸管理業界では、小さな会社でも顧客に安心していただける仕組みがあります。

"日管協預り金保証制度"という仕組みです。

賃貸管理会社選びで迷われている方のひとつの目安となる"日管協預り保証制度"についてお伝えします。

日管協預り金保証制度の何が安心?

先日賃貸の管理会社が預けた敷金、家賃を返さないまま音信不通になったという事をお伝えしました。

賃貸管理委託契約の落とし穴:エージークリエーション事例

余談ですが、エージークリエーションは2024年1月9日付けで宅建業の廃業をされておりました。

ざっくりまとめると、入居者→保証会社→管理会社という流れで家賃が大家さんに送金されるはずが、管理会社で止まってしまい、大家さんが右往左往しているというものでした。

仮にエージークリエーションがこの"日管協預り金保証制度"に加入していたら、大家さんはさほど困らず、あせらず、次の管理会社探しをすることができたのになという制度になります。

管理会社が倒産したら保証弁財

日管協預り金保証制度に加入している不動産管理会社が倒産したとします。その際に、本来であれば大家さんが受け取るべきお金があったとします。そのお金払ってくれると。

保証対象となるものは、下記の通りで、まあ誰しもが見たことのあるような「それ大家さんのお金だよね?」というものです。

保証対象の預り金
  • 家賃
  • 管理費や共益費
  • 敷金
  • 礼金
  • 更新料
  • その他管理委託契約に基づいて大家さんに引き渡すべき金銭

サブリースの場合も適用され、もちろん集金代行の管理委託契約で管理会社経由で家賃が送金される場合にも適用されます。

家賃だけは、支払いの限度額が1ヶ月とのことです。

「管理会社の経営があやういらしい」「管理会社が潰れた!」と気がつくのはだいたい2ヶ月か3ヶ月送金が滞ったときなので、1ヶ月が上限というのは少ないなという印象は受けますが、何もないよりかは良いと言えるでしょう。

一時管理会社の紹介

繰り返し先程のエージークリエーションの事例を用いてしまうのですが、被害者の方々のX(旧Twitter)にて新しい管理会社探しをしている様子を伺うことができました。

今までまかせっきりだったのに、ある日突然"賃貸管理の仕事やれ"となってできる人はごく少数でしょう。

そんな時のために"一時管理会社の紹介"制度が設けられています。

"一時管理会社"は日管協預り金保証制度加入する際に、「他の会社に何か会った時に一時管理会社をやります!」と立候補をしてくれている会社がいます。

その管理会社のリストをオーナーさんが見て、オーナーさん自身で一時管理会社を選ぶ事ができるという仕組みになっています。

一時的・緊急的な管理業務を一時管理会社に依頼することで、あなた自身はもちろん入居者への迷惑も最小限に抑えることができるようになるでしょう。

また、管理会社から突然の倒産を聞いた時はやはりパニックに陥ることかと思われます。そんなパニックを抱えた状態で新しい管理会社を早急に探さなければという状態よりも、自体が落ち着いてから冷静になってあらためて管理会社選びをすることができるという選択肢の誤りを回避することもできるでしょう。

施設管理者賠償責任保険の付与

これは大家さんであるあなたには直接の関係はないのですが、不動産会社が守られることで間接的に不動産会社の倒産を回避するようなものです。

具体例でお伝えしますと、2021年に下記のような事故がありました。

八王子市アパート階段崩落死亡事故の実態「ずさんな工事が毎日」発覚する手抜き工事…10年前にも

これはいわゆる手抜き工事が原因なので、さすがに保険の適用とかそのような話ではないのです。

ただ、例えば、これが管理会社の管理不備により起きたという時は管理会社に損害賠償が行き、それにより管理会社の経営が傾き初めてしまうという事がありえます。

そんな時に使える保険に加入する形になるというものです。

第三者による審査がある

様々な保証があるとはいえ、それだけでその会社が信用に足るのかどうかはわからないですよね。

この制度に加入するためには、公認会計士、弁護士、大学教授等の公正な立場の第三者などで構成された"保証審査会"があり、厳正な加入審査を通過しないと加入できないのです。

宅建業ではよく「ハトのマーク」「うさぎのマーク」は安心の印などと言いますが、不動産保証協会は要件さえ満たせば誰でも加入できるものです。不動産業者の95%が加入しているのに、不動産業者による不祥事は後をたたないので、安心の印としての役目は全く果たしていないと言えるでしょう。

賃貸住宅管理業者

250戸以上を預かる管理会社は、賃貸住宅管理業への登録が義務付けられました。ただ、現時点では登録がされるようになっただけで、公開されている情報はまだ何もなく、特別な抑止力となっていると感じることはできていません。

登録時の資産要件は、簡単に言えば「債務超過でなければよい」程度のものです。

賃貸管理会社選びで、ひとつの目安となるものではありますが、登録しているからといって安心できるというものにはなっていないというのが現状でしょう。現に何度も登場しているエージェントクリエーションも賃貸住宅管理業に登録していました。

宅建業の業者名簿閲覧

賃貸管理を行っているところの大半は宅地建物取引業にも登録しています。宅地建物取引業に登録していたら、通常の会社よりも業者の情報が開示されます。

決算書の貸借対照表、損益計算書や更新時には5年間の取り引きの記録が一般に公開されています。

ただ、決算書の表面だけを見て読み取れることは少なすぎますし、取り引きの件数は一般の人が見たら何が書いてあるのか読み解くことも困難なものです。

何よりもそういった情報が5年に1回しか更新されないので。。。不動産業界は、5年前は経営が絶好調だったけど、この数ヶ月で一気に傾き始めたという事が多い業種です。

ネットで検索して情報を見た時に「あっ5年前の記事だった」と別の記事を探し直さないでしょうか?移り変わりがより早くなっている現代において5年に1回の情報更新はあまりにも物足りないと感じます。

何もないよりかはマシとは思いますが、その程度の情報提供しかできていないというのが現実です。

せめて建設業のように毎年業務の報告をするようにしたほうがよいのではないかと日々感じています。

財務状況審査がある

そのような中、"日管協預り金保証制度"に加入するためには、第三者による保証審査会にての審査を通過が必要になるというので、加入会社の信頼度が大きく変わる事でしょう。

保証審査会の中には、財務諸表のプロである公認会計士も入っておりますし、法律取引のプロの弁護士も入るので。

審査基準を公にしてしまうと、それに対しての対策を施す会社というのが出てくるので、審査基準まではわかっていないです。

そのように審査会を開かなければならないので、加入の受付は年に2回となっています。

運営元は?

運営元は"公益財団法人日本賃貸住宅管理協会"になり、会員数は2,317社です。

それに対して"日管協預り金保証制度"に加入しているのは616社です。

加入が困難なのか、加入したいと考える業者が少ないのか理由はわかりませんが、厳しい関門を超える必要があるのは間違いないです。

参考までにですが、"公益財団法人日本賃貸住宅管理協会"についても補足しておきます。

現在管理の委託を受けて賃貸に出ている物件の数は、1,174万戸 との事です。(国土交通省「賃貸住宅市場の実態調査」より)

日本国民が約1億200万人なので、まあそれくらいだろうなとうい数字です。

そのうちの850万戸はこの公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の会員によって管理されています。

管理戸数の
約72%

全国の不動産会社によって管理されている部屋の約72%がこの"公益財団法人日本賃貸住宅管理協会"の会員である不動産会社ということになります。

その会社の加入の有無は下記より参照いただきます。

加入会社一覧

小さな不動産会社が生き残れる理由

日本の不動産屋さんは80%以上が資本金2000万円未満です。

不動産屋の半数以上が資本金1000万円未満です。

これは業界の規模的に考えて小さな会社が多数あるなと捉える事ができます。

こういった"日管協預り金保証制度"のような保証制度があるため、必ずしも「大手だから安心」以外の判断基準を与えてくれているためと見ることもできます。

もしも、あなたがサービス面で大手でなく小さな会社の方がいいなと感じるも「倒産してしまわないか不安」という事でしたら、まずはその会社が"日管協預り金保証制度"に加入していないかを確認してから判断をするのがよいでしょう。

日管協預り金保証制度のパンフレット

不動産屋さん向けの情報になりますがパンフレットです。

日管協預り金保証制度