原状回復の保険金詐欺について、ある衝撃的な報道がありました。それは、「自室で死亡」と虚偽申告し、部屋の原状回復費用として100万円を不正に請求し、詐取したという事件です。

また、賃貸の保険関係では、「退去時の原状回復費用を保険で支払える」という情報を見かけますし、勘違いをしている入居者が大変に多いです。

自宅を賃貸で貸し出す人にとって、「入居者が入れ替わる際の原状回復費用を不安に感じるのは当然のことです。そんなあなたに向けて、賃貸の原状回復と保険についてお伝えします。

原状回復の保険金詐欺

突然で少し伝えたいことの論点にズレが生じてしまうかもなのですが、このような報道がありました。

「自室で死亡」と虚偽申告、部屋の原状回復費100万円詐取か…保険代理店代表を逮捕

入居者は実際には路上でお亡くなりになっていたにもかかわらず、居室内でお亡くなり更には発見が遅れたと虚偽の申請で原状回復費用を保険屋さんから騙しとったという事件です。

これを2018年から数回に渡って行ってきたという事件です。

孤独死原状回復保険

加入していた保険は貸主が加入していた保険でしょう。

例えば、三井住友海上の家主費用特約とか損保ジャパンの事故対応等家主費用特約などですかね。

加入していた家財保険は単身の入居者が室内で死亡した際に原状回復の費用を補償するもので、この保険代理店が販売していた。

「自室で死亡」と虚偽申告、部屋の原状回復費100万円詐取か…保険代理店代表を逮捕

大家さんは加入しておいた方がいい

詐欺の話の直後なのでなかなかスムーズに入って来ない事とお察しいたしますが、自宅を賃貸に出して収益を得ようと考えられているのであればこういった大家さん向けの保険に加入することは必須といえます。

火災保険について以下にまとめておりますので参照ください。

賃貸に自宅を出す前に読むべき!火災保険どうする?

賃借人が加入する保険とは違う

前置きがだいぶ長くなりました。というよりも前置きの方が興味深い話と感じられた方の方が多かったかもしれません。

本題は、賃借人が加入した保険で退去時の原状回復費用がまかなえるといった情報を信じ込んでいる人が少くないという事で、それは誤りであるという事を伝えたいというものです。

入居者が加入する保険の種類と内容

主に賃貸物件に入居者が入居する際に加入する保険は下記のとおりになります。

保険の種類内容補償されるケース
家財保険(火災保険)火災や自然災害から入居者の家財を守る保険。家具、家電、衣服などが補償対象。近隣の火災による家電品の破損、台風による大雨での水漏れによる家具の破損など。
借家人賠償責任保険火災や漏水などにより住宅に損害を与えた場合の、貸主への損害賠償責任を補償。入居者の過失による火災で部屋の一部が焼損、水漏れによる床材や設備の破損など。
個人賠償責任保険日常生活で第三者に損害を与えた場合の損害賠償責任を保障する保険。入居者の過失による火災で近隣の家財が破損、水漏れによる階下の天井浸水など。
入居者が加入する保険

保険会社の回答

いきなり、結論にたどり着いてしますのですが、原状回復に保険を使うことができるか否かの保険会社さんからの回答です。

賃貸住宅入居者火災保険『THE 家財の保険』

Q
賃貸住宅を明け渡すときには原状回復の義務がありますが、借家人賠償や修理費用で補償できますか?
A

いいえ、補償できません。

以上です。

保険のそもそもの目的

家の保険というと使うことがないからなかなかイメージをしづらいのかなと思います。

保険というと車の保険だと大半の方がイメージしやすいかと思うので車の保険の例で例えてみます。

車で走行距離が長くなればなるほどタイヤがすり減って交換の必要があるというのは想像できるかと覆います。

そのタイヤがすり減ったからといって、保険が使えると思いますか?

賃貸の入退去時の原状回復に保険を使えるのかどうかという観点はこれと同じなんです。

保険が使えるときもある

とはいえ、確かに保険を使えるときもあります。保険が使えるときは、同じ損保ジャパンの説明を引用します。

偶然な事故により損壊した場合において、大家さんに対する法律上の損害賠償責任を負ったとき、その損害賠償金をお支払いするものです。

賃貸住宅入居者火災保険『THE 家財の保険』

修理を補填する保険についての説明の引用です。

修理費用補償とは、借りている戸室が偶然な事故により損害を受け、大家さんとの賃貸借契約に基づき修理した場合、または借りている戸室での居住が困難な状態から復旧するために応急修理した場合に負担した修理費用を補償します。

賃貸住宅入居者火災保険『THE 家財の保険』

あくまでも偶発的に起きた事故によった場合のみ使える可能性があるというものになります。

これを「原状回復は保険を使え」というのはあまりにも雑だなと感じます。

保険の申請書はとても大変

仮に保険が適用されるような傷があったとします。その傷を修繕するために明らかに大きな金額が必要になってしまうという場合であるなら理解できますが、通常の予測の範囲内の傷や損傷であれば。。。そのために保険会社に保険の申請をするというのはあまりにも労力に見合わない手間がかかってしまいます。

保険の申請書作成の代理をする業者があるくらい大変なもので、よほど普段から書類作成に慣れている方で内限り困難なものになります。

ソニー損保のサイトでは「火災保険の請求は難しくない!」と書いてくれていますが、果たして。。。

勧誘時には、「保険金の請求は非常に難しい」などと契約者の不安を煽ったり、「保険金請求まで時間がない」と焦らせて契約を結ばせようとしたりする業者も見られます。「保険会社は再調査をしないので、見落とした被害は請求できない。当社が調べれば請求できるので契約を」と言われることもありますが、真に受けないでください。火災保険金の請求も、特段難しいことはありません

ソニー損保

屋根リフォーム詐欺も保険金詐欺の一種

「屋根が壊れていますよー」と訪問して、「修理は保険金でまかうことができるから直しましょう」という詐欺であったと思われます。

組織的「リフォーム詐欺」で警視庁が摘発強化 不要な屋根工事、相談5年で3倍以上

この屋根をわざと壊していたのであろうというから悪質です。

「屋根の一部が風で飛びそうになっている」などと言って屋根に上り、故意にくぎが抜けるようにするなどした上で修理代として52万3600円をだまし取ろうとしたとしている。

屋根を故意に壊して修理代請求 大和住建社長ら再逮捕 詐欺未遂容疑 警視庁

全国的にはビッグモーターの報道の方が有名かと思いますが、やっていることは似たりよったりですよね。

ビッグモーター保険金不正請求問題で報告書 「ゴルフボールを靴下に入れ 車体を叩きわざと傷つけ水増し請求」

余談ですが、このビッグモーターの保険の問題については、もっと日本人全員が怒った方がいいんですよね。自動車保険というのは、交通事故などによって将来的にどの程度保険料を支払うのかという予測の数値が算出されて、それを元に保険料が決まるんです。ビッグモーターが水増しした金額は1台あたり39,000円だったという調査報告がありました。

すべてが不正請求であったのかどうかまでは定かではありませんが、仮に全部に不正があったと過程すると年間11億円ほどの水増しがあったという計算になるんです。

保険会社が支払う金額の全体からすればわずかなのかもしれませんが、元となる数値に影響を与えた可能性というのはあるわけなんです。

つまり、私たちの保険料が少し高くなってしまっていたという可能性があるわけなのです。

まとめ

不動産とは関係のない余談を挟んでしまいましたね。賃貸の話に戻します。

賃貸物件のオーナーとして、自宅を賃貸に出す前に、保険について十分に理解し、適切な保険に加入しておくことは非常に重要です。また入居者がどのような保険に加入するのかは、賃貸の募集を任せる不動産会社によって変わります。ただ、不動産屋の大半が保険のことまで丁寧に説明をしてくれません。保険まで丁寧に説明をしてくれる不動産屋さんであれば、勤勉な方であると信頼に値するという判断をして問題ないと言えるでしょう。。