Q
転勤で自宅を賃貸に出すことにしました。加入している火災保険はこのままでよいのでしょうか?
A

火災保険への加入は継続いただきたいです。が、加入する保険の見直しは推奨します。ご自身が居住する前提で加入されている火災保険は”家財”にも保険がかかっていると思われます。部屋を賃貸に出せが、”家財“には入居者が加入する保険が適用されます。

また、各保険会社は”大家さん向け”の特約を用意しているのでご自身にとって必要な特約を選ぶのがよいです。

火災保険は建物の使用目的で変わる

ご自身が住んでいた物件・部屋を賃貸に出す時火災保険をどうすればいいのか?というのはもっとも多く受ける質問のひとつです。

結論をお伝えすると、ご自身が居住用として使うのも、賃貸に出して入居者の居住が目的であればそれによって変わることはありません。見るべきところは自分が住んでいるか?賃貸に出しているか?というところではありません。

火災保険の保険料率は以下の4つに分類されます。

火災保険の保険料率分類
  1. 住宅物件
  2. 一般物件
  3. 工場物件
  4. 倉庫物件

3,4は除外して、1.住宅物件,2.一般物件についてのみ補足をします。

火災保険の住宅物件とは?

住居専用建物の事です。誰が居住していようとも、例えば一棟まるごとが賃貸物件でも全部屋が居住用としてのみ使われていれば、この”住宅物件“に分類されます。

ご自身の部屋を居住用のみとして使用していたとするならば、賃貸に出してもその方がこの分類に変える必要はないです。

火災保険の一般物件とは?

ひとつの建物の中に、店舗として利用している部屋があったり、ひとつの部屋でも部屋の一部を事務所として利用していたりすると、店舗併用住宅となり、”一般物件“に分類されます。

なので、例えば、ご自身の部屋で新たに起業したりするとかであれば、それは火災保険の変更は必要になります。

ここでいう変更と、部屋を賃貸に出すというのは別物です。

少し注意しなければならない点としては、賃貸で居住用として募集していても「事務所として使えますか?」「登記できますか?」という交渉をよく受けます。これらを了承してしまった場合は、居住用として加入していた火災保険の変更が必要になります。

どこに保険がかかっているのかを見極める

居住用として使われていたということであれば、加入していた火災保険は建物にも家財(家具)にも適用されるものに加入されていたかと思います。

建物の火災保険の加入は継続するのが通常ですが、家財(家具)の保険は適用を外していただくのが通常です。家財(家具)の保険は入居者が加入するものになります。

自分が居住用の火災保険なのか、賃貸に出す火災保険なのかと考えるよりも、保険の対象となっているものが何か?を見極める事がポイントです。

誰が責任を負うのかを見極める

自宅を居住用として使用していた火災保険をそのままで賃貸に貸し出す例でよく誤っているもので”個人賠償責任”を付帯されたままの場合があります。これも見直すべき大きなポイントになります。

個人賠償責任と言われてもピンと来ないかと思いますので具体例を出します。

個人賠償責任が適用される具体例

お風呂の水を出しっぱなしにしていたため、水漏れしてしまい、下の階の部屋に漏水し、階下住人のパソコンを壊してしまって、弁償を求められた。

賃貸管理会社にいると、とてもよく聞く事例のひとつです。この”個人賠償責任”には入居者が加入します。

自分が住んでいればそういった保険が必要になるであろうとなりますが、人が居住するのでその個人賠償責任の付帯は不要となります。

付帯すべき特約は”施設賠償責任特約”

賃貸経営を目的として購入したわけでなくても、部屋を有償にて貸し出すという事はそれは保険会社からすると”事業“としてみなされます。加入すべきは”個人賠償責任”ではなく、”施設賠償責任特約“になります。

施設賠償責任が適用される具体例

給排水設備が破裂して水漏れしてしまい、下の階の部屋に漏水し、階下住人のパソコンを壊してしまって、弁償を求められた。(入居者は何も悪くない)

個人賠償責任の具体例では、お風呂の水を出しっぱなしにしていたという入居者の過失がありました。

一方、施設賠償責任の具体例では、老朽化により起きた事で入居者は何も悪くないのです。そういった場合は入居者が加入している保険を使うことはできません。

施設・設備を起因をした事故であるため”施設賠償責任”を適用させる必要があり、これは所有者、つまり貸主であるあなたが加入する必要のあるものとなります。

誰が責任を負う?という観点から読み解くと必要なものとそうでないものの見極めができるようになります。

賃貸オーナーさん向けの特約

主にご自身で居住されていた時に加入していた保険から、賃貸に出す際に保険の見直すべきポイントについてお伝えしました。各保険会社は様々な賃貸オーナー向けの保険商品を提供しています。いくつか具体例を紹介します。

家賃収入特約

火災などの事故で部屋を貸すことができなくなってしまった時に、家賃収入を保険金として支払ってもらえるものです。ただ、空室が続いているからと、その間の賃料を保証してくれるものではありません。

家賃費用特約

お部屋の中で、孤独死や死亡事故発生が発生してしまって、その間空室になてしまった場合、家賃値引き期間分の家賃収入の損失や、清掃、消臭、脱臭、遺品整理等にかかる費用を補償します。隣室での事故も含むとされています。

死亡事故対応費用保険金とは?

孤独死の発見が遅くなってしまうと、床などを張り替える必要が出るのが通常です。そういった原状回復費用なんかを補償してくれます。孤独死などがあると荷物が室内に残ったままになってしまうのですが、その処分費用などの補償もあります。

借家人賠償責任とは?

保険の名前って全保険会社が共通しているので、おそらく名前を決めているのって金融庁とかなのですかね?

どれも名前が似通っていて区別が難しいです。携帯電話の料金体系のようにわざとわかりにくくさせているのではないかとすら感じてしまいます。

そんな中で賃貸経営に携わっていてよく見かけるのであろうものが”借家人賠償”という保険です。”個人賠償”と似通っていますよね。。。

これは入居者である賃借人が加入するものです。

借家人賠償責任が適用される具体例

入居者が冷蔵庫を移動する際にフローリングに大きなキズをつけてしまった。

入居者に過失があって建物を損傷した場合に大家さんに対して負う責任を補償してくれるものです。

賃貸経営をしていると入退去の際の原状回復の費用が大きな不安のひとつになることかと思います。「これは明らかに賃借人の不注意が原因だろ!」というようなものは保険で原状回復費用を捻出できる場合もあります。

まとめ

細々と説明をしてきましたが、火災保険の他に地震保険もあったりで、まだまだ説明が足りないと感じています。こんなに細かいと。。。保険業界の方であったり、隣接業種に従事していたりしない限り、「つまり火災保険どうすればいいの?」の最適解を導き出す事ができる人は稀でしょう。

「全部加入しておけばいい」と乱暴に推奨する不動産業者もいることでしょう。

「火災保険については保険屋さんに聞いてください」と保険屋さんに丸投げする不動産業者が最も多いと思われます。

私たち株式会社いえどきは、加入すべき火災保険も含めて、どういった保険に加入すればあなたのキャッシュフローが最適になるのか、起こりうるであろう最悪のパターンまで含めてシュミレーションいたします。

「部屋を賃貸に出したいけど、保険はどうすればいいんだろ?」とお悩みであればどうぞお気軽にお聞きください。