突然の転勤を言い渡され、購入した自宅に住むことができなくなるという時に、自宅を賃貸に出すという選択肢が浮上します。空き家を有効活用し、収入を得るチャンスとはなりますが、準備や管理には知っておくべきことがいくつかあります。

この記事では、自宅を賃貸に出すまでのプロセスをステップごとに詳細にお伝えし、スムーズに進めるためのポイントを紹介します。そして、いつでも必要な情報を手早く見つけられるように、読みやすい構成でまとめました。

賃貸に出す際のあなたの疑問や不安を解消し、より良い決断を下すためにご活用ください。

自宅を貸し出すまでの流れ

自宅を賃貸に出すことを考えたとき、最初に知っておくべきは、そのプロセスがいくつかの明確なステップに分かれているということです。

まず全体の流れをお伝えし、その後で各ステップの詳細をお伝えしていきます。

1
金融機関との相談

住宅ローンが残っている場合、賃貸に出す前に融資した金融機関に相談しましょう。契約違反にならないよう、必要な手続きや条件の変更について確認する必要があります。

2
物件の準備

自宅としてお住まいであったからそのまま賃貸に出せるという状態ではないのが通常です。賃貸に出す前に物件のクリーニングや必要な修繕を行いましょう。何をどこまでやればよいのか?については不動産屋さんと相談して決めましょう。

3
不動産会社の選定

賃貸物件の募集を任せる不動産会社を選びましょう。そのままそこの会社に入居者とのやり取りやトラブル対応、賃料や敷金のやり取りなどを任せることになる可能性が高いので慎重に選びましょう。

4
貸出方法の選択

普通借家契約、定期借家契約、サブリース契約の中から、ご自身の状況に合った貸出方法を選びます。見慣れない言葉を丁寧に説明してくれるかどうか、「都合のよいところばかりを言っていないか?」というのが不動産屋を選ぶ際の基準とすることを推奨しています。

5
不動産会社と媒介契約

選んだ不動産会社と媒介契約を結びます。選ぶべき不動産会社は必ずしも1社である必要はありません。

6
募集条件の決定

賃料設定や入居条件を決め、入居者の募集を開始します。

7
入居者と賃貸借契約締結

入居希望者の内覧を実施し、条件に合意が得られたら賃貸借契約を締結し賃貸開始となります。

8
賃貸管理委託契約締結

媒介契約時に同時に行うことの方が多いものですが、不動産屋さんの賃貸管理の仕事が始まるのは入居者が決まってからになります。賃貸管理の仕事を任せる不動産会社と締結する契約を賃貸管理委託契約と呼びます。

金融機関との相談

「自宅を貸し出す」とう時、まず最初の躓く問題として住宅ローンの問題があります。多くの場合、住宅ローンは自宅に自分または親族が住むことを前提に組まれています。賃貸に出すこと自体が契約違反になることとなってしまう場合があります。

賃貸に出すためには、金融機関の了解を得る必要があります。場合によっては、事業用ローン、アパートローンに切り替える必要が出てくるかもしれません。

転勤などの一時的な理由であれば、住宅ローンの条件をそのままで賃貸に出せる特例を設けている金融機関もあります。

住宅ローンについては、ひとりひとり事情が異なるので、やはり銀行に確認していただく以外はないです。

賃貸期間中もローンの返済は続くため、家賃収入とのバランスを含めて、返済計画の見直しも必要になります。何よりも事業用ローンになると金利が高くなってしまう事でしょう。賃貸に出すことで新たな収入源を得られるかもしれませんが、資金計画については入念に確認をする事が重要です。

物件の準備

クリーニング・リフォーム

まずは、物件を賃貸市場に出す前に、その状態をしっかりと確認しましょう。

自宅として使われていた場所を賃貸に貸し出す際には、多くの場合そのままでは出せないというのが大半です。

専門業者によるクリーニングから、もう少しの修繕やリフォームが必要かもしれません。この段階で重要なのは、賃貸市場の需要に応じて物件を魅力的に見せることです。市場の傾向を踏まえた上で、どのような改善が物件の価値を高めるかを見極めることが大切です。

不動産屋は市場の動向や入居者の好みに精通しており、どの程度の修繕が必要か、またはどのようなリフォームが物件の魅力を最大限に引き出すかについて、貴重な意見を提供してくれます。

不動産屋選びのステップと順番が前後してしまっておりますが、実際の作業に取り掛かる前にアドバイスを求めることは非常に有益です。

不動産会社の選定

不動産会社は、物件の募集つまり賃料や条件を決める事から入居者の選定、賃料や敷金のやり取り、そして日常的な管理やトラブル対応まで、賃貸経営における多くの業務を担うため、最も大切なプロセスのひとつと言えます。

不動産会社を選ぶ際にみるべきポイント
  • 市場知識 地域の需要や入居者の傾向を理解している不動産会社を選ぶ事です。物件の賃料を市場価値に見合った適正価格で設定することができます
  • 地域知識 地域のニーズや好みを理解しているため、ターゲットとなる入居者に合わせた効果的なマーケティング戦略を立てることができます。例えば、ファミリー層が多い地域では、学校や公園の近くの物件が人気を集める可能性が高く、そのような特性を最大限に活かした広告の期待が持てます。
  • 経験 賃貸管理の経験が豊富な会社は、入居者募集から契約締結、管理までのプロセスをスムーズに進行させることができます。また、トラブルが発生した際の対応も迅速かつ適切に行えるでしょう。
  • 料金構造 不動産会社に支払う料金や手数料の構造を理解し、賃貸管理の集金代行まで任せるのであれば資金の流れがどのように流れなのかまでしっかり理解し、隠れた費用がないかを確認します。
  • 対応の速さと丁寧さ 最初の問い合わせから対応の速さや丁寧さも、その不動産会社との長期的な関係を築く上で大切な要素です。レスポンスが早く、親切に対応してくれる会社は、入居者からの問い合わせやトラブルにも迅速に対応してくれる可能性が高いです。
  • 口コミや評判 既にその不動産会社を利用したことがある人の意見や評価も参考になります。実際のサービスの質や顧客満足度を把握するために、口コミやオンラインの評判を調べてみましょう。
  • サービス内容 契約前に提供するサービス内容を確認し、自分のニーズに合ったサポートを提供してくれるかどうかをしっかり確認しましょう。

貸出方法の選択

賃貸に出す際の貸出方法の選択は、将来的な計画や物件に対する考え方に基づいて決定する重要な要素です。主に、普通賃貸借契約と定期借家契約の二つの選択肢があります。※サブリースについては難しい問題を多々含んでいるので割愛します。

賃料を高くしたいなら普通賃貸借契約

普通賃貸借契約は、契約更新の際に「正当な事由」がない限り更新を拒否できない契約です。これは、賃借人にとって安定した居住権を提供する一方で、貸主が物件を取り戻したい場合には、賃借人に退去を求めることが難しくなります。

市場価格に合わせて賃料を設定し直すことが可能ですが、これはあくまでも貸出時においての話です。契約継続中は賃料の値上げがとても困難であるというデメリットもあります。

いつか自宅に戻りたいなら定期借家契約

定期借家契約は、契約期間が明確に定められており、期間終了時には自動的に契約が終了し、原則として更新はありません。この契約形態は、将来的に自宅に戻る可能性がある場合や、一定期間後に物件を自由に使いたいと考えている方に推奨しています。

契約期間が終了すれば、賃借人に退去を求めることができるため、自宅への戻りやすさを確保できます。

定期借家契約となると賃料が市場価格より低めに設定せざるを得ないのが通常ですが、再契約型の定期借家契約をうまく活用する事で、市場価格に合わせた賃料設定も可能になります。

自宅を賃貸に出す際は、将来の計画と物件への期待に合わせて、これらの契約形態の中から最適なものを選ぶことが重要です。不動産会社と相談しながら、自分にとって最適な貸出方法を選定しましょう。

不動産会社と媒介契約

入居者を不動産会社に依頼する際に、締結する契約を媒介契約と呼びます。この契約を通じて、物件の広告掲載から入居者募集、契約の締結までの仲介業務を不動産会社に委託します。媒介契約には「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の三つの主要な形態があり、それぞれ異なる特徴と条件を持っています。

媒介契約については、こちらだけでも伝わるようお伝えしますが、”賃貸での専任媒介契約:よくある勘違いと媒介契約の比較“にてより詳細に書いておりますので参照ください。

一般媒介契約

一般媒介契約は、複数の不動産会社に仲介を依頼できる契約で、物件所有者は自分自身で買主や借主を探すことも可能です。この契約形態は最も柔軟性があり、多くの不動産会社を通じて物件を広く市場に紹介できる利点があります。

専属専任媒介契約

専属専任媒介契約は、一社のみに仲介を依頼し、その不動産会社のみが物件の募集活動を行う契約です。この形態の契約では、物件所有者は自身で借主を探すことができません。最も貸主の判断の自由を奪う契約となっており、全く推奨していません。

専任媒介契約

専任媒介契約では、専属専任媒介契約と同様に一社のみが仲介業務を行いますが、物件所有者が自ら買主や借主を探すことが可能です。賃貸では”代理”とうい言葉が代わりに使われたりしておりますが、代理と媒介は全く異なる法律概念を持ったものになります。

媒介契約の比較表

契約の種類 専属専任媒介契約 専任媒介契約 一般媒介契約
仲介依頼の数 1社のみ 1社のみ 複数社可能
自分で買主/借主を探す 不可
媒介契約の期間 3ヶ月以内 3ヶ月以内 期間指定なし
レインズへの登録期限 5日以内 7日以内 任意
登録証明書の受け取り 必須 必須 必須
業務状況の報告頻度 1週間に1回以上 2週間に1回以上 報告を求めることが可能
媒介契約の更新 文書で申し出 文書で申し出 文書で申し出
成約登録 必須 必須 規程による

募集条件の決定

自宅を賃貸に出す過程で、募集条件の決定は最も重要なステップと言えるでしょう。

賃料設定

賃料の決定は自宅を賃貸に出すために最も必要な箇所で、いろいろな説明があるものの、これ以外特に期にしなくてもいいのではないかというものになるかと思います。説明するほどの事ではないのですが、物件の立地、広さ、設備の質、そして周辺の市場価格に基づいて決定します。

入居条件

ペットの飼育可否、喫煙の可否、事務所利用の可否など、入居条件を設定することでターゲットとする入居者層を絞り込むことができます。また、これらの条件は物件の状態を維持するための重要な要素ともなります。条件を明確にすることで、トラブルを防ぎながら希望する入居者を募集することが可能です。

契約期間

定期借家契約の場合は、契約期間も決める必要があります。その期間をどのように設定するかが重要です。

その他の条件

敷金、礼金、更新料などの費用に関する条件もこの段階で決定します。これらの費用をどのように設定するかは入居者募集に影響します。地域的な慣習や物件の特性に応じて、不動産屋さんと相談して決めるのがよいでしょう。

賃貸借契約開始

入居希望者の内覧を実施し、入居希望者との条件に合意が得られたら賃貸借契約を締結し賃貸開始となります。

入居希望者の内覧

実際に物件を見てもらい、入居希望者に物件の魅力を直接感じてもらう機会を提供するために、不動産会社が案内します。物件の特徴や設備、周辺環境などをあなたの物件を最大限高めることができるよう紹介します。

申込書の提出

入居希望者には、申込書に記入してもらいます。この申込書には、個人情報、職業、収入、住居情報など、審査に必要な情報が含まれます。

貸主さんになられるあなたには、申込書に記載された情報と営業担当者からの直接の印象を総合的に考慮して、入居希望者が自身の物件に適した借主であるかどうかを判断してもらいます。

入居希望者の審査

入居希望者が適切な入居者であるかを審査します。物件オーナーとして安心して貸し出すことができるかの審査を厳格に行います。これにより、滞納リスクを低減し、物件の維持管理を確実に行う事が期待できます。

契約締結

次のステップは入居者との賃貸借契約の締結です。このフェーズは、物件の賃貸借契約を正式に決定し、貸主と借主の間で権利義務を明確にする重要なプロセスとなります。

賃貸借契約書、重要事項説明書には、物件の詳細な説明のほか、月額賃料、支払い条件、契約期間とその更新条件、敷金や礼金に関する規定、ペットの飼育や喫煙の可否など、入居に関する具体的なルールが含まれます。また、物件の維持管理に関する事や、退去時の原状回復義務についても詳細に取り決めをします。

契約が成立した後は、鍵の引き渡しを行い、賃貸借契約の開始となります。

賃貸管理委託契約

賃貸管理委託契約の締結は、媒介契約と同時に行う事が実際は多いことでしょう。この契約により、家賃管理、クレーム対応、契約業務といった入居者管理の各面を不動産屋さんに任せることができます。

家賃管理

家賃管理は、入居者からの家賃収入を確実に管理し、オーナーの口座への振り込みを担います。集金代行業務などと呼ばれています。

家賃滞納が発生した場合は、不動産管理会社が入居者に対して督促を行います。

クレーム対応

賃貸物件運営においては、クレーム対応もまた重要な業務です。設備故障や入居者間のトラブルなど、様々な問題に迅速かつ適切に対応することで、物件の価値を守り、入居者の満足度を高めることができます。賃貸管理会社は、これらの問題を専門的な知識と経験をもって対処し、トラブルを未然に防ぎます。

契約業務

契約業務では、入居者の入退去時の契約書作成や更新、解除の手続きを行います。これには、入居者との意思確認や必要書類の準備、契約条件の説明などが含まれます。

入居者とのトラブルを避け、スムーズな契約更新や退去処理までを行うのが通常です。

まとめ

自宅を賃貸に出す過程は、多くの重要なステップから成り立っています。金融機関との相談から始まり、物件の準備、不動産会社の選定、貸出方法の選択、媒介契約の締結、募集条件の決定、入居者審査、内覧の実施、賃貸借契約の締結、そして賃貸管理委託契約の締結に至るまで、各フェーズは物件の成功的な賃貸へと導くために不可欠です。

長文 最後までお目通しいただけた事厚くく御礼申し上げます。