はじめて自宅を賃貸に出そうという方のために、不動産屋さんの”選び方”ではなく”選んではいけない不動産屋”を見分けるポイントを伝えています。

本日は、「専任媒介契約がお得」と説明する不動産屋さんは信頼に値しないという事についてお伝えします。勘違いしないでいただきたいポイントは”専任媒介契約が悪い”という事を伝えたいわけではないです。”専任媒介契約”がいかにも「あなたのためになります」という説明が嘘であるという事が伝えたいコアになります。

なんだか難しい”媒介”という言葉

不動産屋が説明するが大家さんのみならず大半の方が「?」となります。

難しい言葉をいかにもとドヤっと説明するとなんだかその人が頭が良さそうに見えるという不思議な現象が起きます。そんな現象を利用して、「専任媒介契約があなたにとって最適です」と丸め込むのが昔ながらの不動産屋さんの営業手法で、今なお、まだそういった不動産屋さんが少なくないというのが現実です。

なぜ専任媒介が駄目なのか?

“媒介”の種類や言葉の詳細な意味などについては後述します。まずは言葉の理解をしなくても伝わるようざっくりの説明から、専任媒介契約のどこが悪いのかについてお伝えします。

ご自身の部屋を賃貸に貸し出すことが決まりました。その部屋の入居者を募集する際に不動産屋を頼るかと思います。その募集の依頼をする部分の契約を”媒介契約“と言います。

“専任媒介”はひとことで伝えると、「あなたの会社だけに任せます」という契約です。

競争がなくなる

専任媒介契約にて不動産会社に依頼をすると、その部屋の募集をする事ができる元付け業者は1社だけになります。1社だけになると。。。業者間の競争がなくなります。競争力がなくなるとおこることを書き出します。

競争力がなくなるとおこること
  • サービス品質の低下
  • 貸出努力の低下
  • 独占的な関係のリスク
  • 交渉力の低下

古すぎる専任媒介契約

専任媒介により、業者間の競争がなくなります。不動産業者は入居者を獲得するために追加の努力をしなくなる可能性があります。極端な例になりますが、現在の郵政グループ、JR(旧国鉄)、NTT(旧日本電信電話公社)が独占することによって、サービスの革新や効率性の面で遅れをもたらしたので、競争のある民営化の動きにつながりました。競争を導入することにより、サービスの向上が見られるようになったのは全日本国民が感じていることでしょう。

宅建業法の専任媒介契約というのは、この日本の悪しき慣習が残っているというもののひとつです。

昭和27年(1952年)に制定された宅建業法は専任媒介について昭和55年(1980年)に法定され、専属専任媒介について昭和63年に専属専任媒介が法定されました。

媒介については、それ以来大きな変更を経ていません。日本郵政、NTT、JRなどがそれぞれの分野で独占的な事業を展開していた時期でした。今日における専任媒介契約は、この時代の独占的なビジネスモデルを反映していると言えるでしょう。

NTTとJRは民営化に動いていた時期ですが、いずれにしても”専任媒介”の契約形態は現代のビジネスシーンにおいてはあまりにも古臭いと言わざるを得ない仕組みになっています。

専任媒介は不動産屋のための仕組み

媒介契約が定められた昭和55年当時はいざしらずですが、現代において”専任媒介契約”は貸主である大家さんのためではなく、不動産屋がその取引を独占したいための仕組みとなってしまっていると言うことができるでしょう。

専任媒介ゴリ押し業者は信頼に値しない

賃貸物件の大家さんであるあなたのためであるならともかく、営業をしている不動産業者が得するためのものになっているにも関わらずいかにも「専任媒介の方が早く入居者が決まります」「専任媒介だと家賃が高く出せます」「専任媒介なら広告費用を多くかけます」などといかにも「あなたのため」という営業トークがあるのですが、すべて嘘です。

不動産業者同士で競争をさせる方が入居者が早く決まるのは比較するまでもなく明らかでしょう。家賃設定についても、相見積もりのようなものをするのが通常なので、1社に任せた方がよいという結論になるはずがありません。

仮に空室が続いてしまったという状況のときも、空室になってしまう原因がなんであるのかは1社だけに任せているとその原因を探すのが困難です。不動産屋さん、それぞれの多角的な視点からの意見をもらったほうが、より良いものになることでしょう。

いずれにしても、「あなたのための専任媒介」というニュアンスを発する不動産会社は信頼に値しないと断言できます。

専任媒介のいいところもある

繰り返しになりますが、”専任媒介契約が悪い”と伝えたいわけではありません。”専任媒介契約をいかにもあなたのためです”と進める営業トークがよくないと伝えています。専任媒介にもよいところは多々あります。

専任媒介は期限がある

専任媒介契約は3ヶ月以内でしか契約締結をする事ができません。自動更新が不可なので、3ヶ月ごとに毎回契約を結び直す必要があります。

そのため、「3ヶ月以内になんとか決めないと!」と不動産屋さんにとって期限があって頑張りやすくはなります。

ただ、これも専任媒介契約ではない一般媒介契約でも期限を定めることができるので、一般媒介契約で3ヶ月の期限を定めた契約にすればよいだけという簡単な代替案のあるものではあります。

営業が来なくなる

不動産会社同士は競争をしています。その部屋の募集が”一般媒介”なのか?”専任媒介”なのか?といつも目を光らせています。

“専任媒介”であれば、目を光らせている不動産屋はその物件はすでに人の物かと諦め無駄な営業行為を受けることはなくなるでしょう。

契約相手が複雑化しない

一般媒介だと複数の不動産屋さんに同時に依頼することになります。そのため、同時に入居希望者の情報が届く可能性があります。とても低い可能性ですが、誤って同時に契約手続きまで進んでしまうという事が起こりえます。

専任媒介であれば、やり取りをする不動産会社は1社だけなので、そのような事に陥ることはないでしょう。

ただ、これも一般媒介は確かに複数お会社と締結することができますが、1社だけと契約することも、当然のことながら可能です。複数の不動産会社から連絡の来るのが億劫であれば一般媒介契約で1社とだけと契約をすればよいだけというものではあります。わざわざ専任媒介契約で自分自身の選択肢を狭める必要はないものと言えます。

専任媒介契約のおまけは本当

「専任媒介契約なら手数料半額」「専任媒介契約なら管理手数料無料」などといった類の広告はよくみかけますし、口にする営業マンは多いです。これらは信じて問題ないものです。

その会社だけに任せたいと考えて、専任媒介契約の見返りとしてのご褒美をいただけるのであればそれは受け取る以外の選択肢はないと言えるでしょう。

そのように謳う不動産会社が増えてきたというのが、専任媒介契約は不動産会社のためのものというのが伝わる事でしょう。

媒介契約の種類

通常であれば、最初に媒介契約の種類から説明をするのでしょうが、順序を代えて最後に媒介契約の種類についての比較です。”専属専任媒介”についてはほぼ触れてきませんでした、”専任媒介契約”と同じであれて、自分自身の選択肢を狭めるために契約をする必要性はないようなものです。

契約タイプ 特徴 利点 欠点
一般媒介契約 複数の不動産会社に販売を依頼できる。 多くの会社を通じて広く販売活動が行われる。 各会社の尽力度が分散し、情報が錯綜する。
専任媒介契約 ひとつの不動産会社にのみ販売を依頼。 情報が整理しやすい 他の業者のサービスを利用できない。
専属専任媒介契約 ひとつの業者のみに依頼し、売主自身も販売活動を行わない。 情報が整理しやすい 売主が自身で販売活動を行うことができない。

まとめ

はじめて自宅を賃貸に出そうというあなたのために、”媒介”について伝えてみました。

“専任媒介契約”というものが悪いわけではありませんが、あまりにも現代のビジネスに即していないものであるというのは伝えてきたとおりです。専任媒介契約で大家さん側が享受できるメリットはすべて一般媒介契約で享受できます。

媒介という聞き慣れない言葉から、通常の判断能力を見失って判断してしまわぬよう、あなたにとって最適な方法を探しましょう。一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の契約タイプを選ぶ際は、それぞれの特徴を慎重に比較し、自分の状況に最も合う選択をすることが肝心です。