不動産をお持ちのオーナー様からよく耳にする質問があります。
「会社の場所はどこですか?」
この質問の背後には、一つの大きな誤解が隠れています。
しかし、実際には、賃貸管理会社を選ぶ際、会社の所在地はそれほど重要ではありません。その理由についてお伝えします。
地元の不動産屋じゃないと不安に思うこと
オーナーさんが抱えがちな不安には、以下のようなものがあります。
- 万が一のトラブルに対応できるのか?
- 地元の不動産屋の方が適切な賃料設定をしてくれるのではないか?
- 地元の不動産屋でなければ、入居者を案内できないのではないか?
万が一のトラブルに対応できるのか?
オーナーさんが最も心配されるのは、物件に関する突発的なトラブルへの対応力でしょう。
例えば、水漏れや電気の不具合など、緊急性の高い問題が発生した場合、物件の近くにある管理会社でないと対応をできないのではないであろうか?と感じられるのはごく自然なことでしょう。
賃貸管理会社に最も求められることのひとつが、24時間365日体制で対応可能なサポート体制であると言えます。
このような体制を実現するために、私たちは全国の不動産業者同士のネットワークを駆使し、各地のリフォーム業者や24時間対応の駆けつけサービスとも提携しています。たとえ拠点が東京にあるとしても、この広範なネットワークと提携関係により、基本的に国内のどの地域にある物件にも、迅速に専門の技術者を派遣し、トラブルに対処することが可能です。これは、物件の価値を保全し、オーナーさん、入居者さんの満足度を高めるために不可欠なサービスです。
地元の業者の方が適切な賃料設定をしてくれるのではないか?
確かにひと昔前は、地元の不動産会社にしか把握できない情報が多く、賃料設定においても地元の不動産会社が有利な立場にありました。
しかし、現在は技ネットワーク術の進化により、日本全国の市場データを収集・分析することが可能になっています。これにより、地理的な制約を超えた精密な賃料設定が可能となり、以前と比べて大きな差はなくなっています。
地域に根ざした企業が持つ、特定の地域や物件の歴史に関する豊富な情報は、他の何物にも代えがたい価値があります。例えば、そのイオンが建つ前に何があったか、といった背景知識は、物件の魅力を伝える上で重要なポイントとなることもあります。
ただし、このような情報も含めて、現代の賃貸管理会社では高度なリサーチ能力によってカバーすることが可能です。
必ずしもすべての不動産会社がと言いたいわけではありませんが、地元業者の場合勘に頼っているという側面も否めません。そういった勘に頼ることが必ずしも悪いわけではありませんが、個人個人の主観が強く反映されるという形になっている事が少なくありません。
賃貸管理会社が利用する市場分析ツールやデータベースには、広範囲にわたる地域の賃貸市場の動向や物件情報が詳細に記録されています。これらのデータを基に、似た条件の物件との比較分析を行うことで、適切かつ公正な賃料設定を行うことができる体制を整えている会社か、昔ながらの地域に根ざした不動産屋を選ぶのかは、人それぞれでよいのではないかと考えています。
ただ、賃料設定において、大きな差が出ることはないであろうことは断言できます。
地元の不動産屋でなければ、入居者を案内できないのではないか?
この不安に対しては、不動産業界のマッチングのメカニズムを知ることで解消されることでしょう。
一般の方が不動産会社によくある誤解として、不動産会社は1社に任せればすべて完結するという誤解です。
実際の日本の不動産の賃貸取引の大半は不動産会社が2社入る形になっています。
不動産業界におけるマッチングは、貸主側の不動産屋さんと借主側の不動産屋さん、それぞれのニーズに最適な相手を探し合うという形になっています。
婚活のマッチングアプリを例に説明
不動産業界のこのシステムの説明を何度も試みているのですが、なかなか理解をいただける事ができていないというのが正直なところです。なので、少しイメージがしやすいようにマッチングアプリを例にして不動産業界の仕組みを説明してみます。
友人関係での出会いの例
一般的に、個人が持つ友人の数は、実際に親密な関係を築いている人の数は平均で約150人程度と言われています。
このうち、異性との出会いの可能性があるとしても、全員が異性、または出会いを求めているわけではないため、実際のマッチングの機会はさらに限定されます。例えば、異性が半分の75人とし、そのうちの出会いを求めているのが10%だとすると、7.5人との出会いの可能性があると考えられます。
婚活マッチングアプリとの比較
婚活マッチングアプリを利用した場合、100万人の異性との出会いが可能で、マッチング効率が0.1%であれば、1,000人の異性とのマッチングが期待できます。これは、友人関係内での出会いの機会(7.5人)と比較して、言われるまでもなく圧倒的に多い数になります。
不動産業界というのは実はこれに類似したネットワークを活用して来た業界であると言えます。
※研究者ではなく、あくまでも不動産業界の仕組みを伝えたいがための前提として伝えた特段根拠のない計算になっているということはご理解ください。
不動産マッチングへの適用
この例をもとに、少し強引ですが、不動産業界の仕組みに当てはめてみます。
ひとつの不動産屋しか介在しないという形は、友人関係内での出会いを求めるのに似ています。
つまり、あなたの部屋に入居したいという借主候補の数が限られます。
例えば、ひとつの不動産屋が持つ入居希望者が300人だとします。この300人だけにしか紹介しないというのがいわゆる"囲い込み"と呼ばれているものです。囲い込みについてはこちらを参照ください。
【図解】”客付け”の強さをアピールする不動産屋を選んではいけない理由
実際にはそのような少ない人数だけへのアピールではなく、全国の不動産業界のネットワークを利用して、10万人というはるかに広い範囲の借主候補に紹介しているというのが不動産業界の仕組みだったりします。
このように、全国の不動産のネットワークを利用することで、あなたの物件に最適な借主を見つける機会を大幅に増やすことができるという仕組みなわけです。
「私の会社はこれだけ顧客を抱えている」ということをアピールする会社よりも、全国ネットワークを通じて情報を共有することの会社の方が、理論上は数千、数万という借主候補とのマッチングが期待できるというわけなのです。
お客さんの案内自体は全国の不動産の仲介に力を入れている会社がしてくれるような仕組みになっているんです。
つまり、「地元の不動産屋でなければ、入居者を案内できないのではないか?」という不安は不要ですよと。
まとめ
結論として、賃貸管理会社を選ぶ際に最も重要なのは、その会社の所在地ではなく、どれだけ広範囲にわたるネットワークと提携があり、どれだけ先進的な市場分析ツールを駆使しているかです。
オーナーさんにとって、物件の価値を最大化し、満足度の高い入居者を見つけるためには、これらの点を重視することが必要です。
募集窓口の変化があろうとも、条件設定の正確さは募集の成功に不可欠であり、そのためには賃貸管理会社の広範なリソースと能力が必要不可欠です。