2024年4月より相続登記が義務化されました。相続登記を怠ると「罰金を払わなければならない」という情報までは広く知れ渡っています。

しかし、その罰金(過料)がいくらなのか?どれくらい放置していたら罰金(過料)を支払わなければならないのか?誰が支払わなければならないのか?免れるすべはあるのか?などについてはあまりにも知れ渡っていないので、相続登記の義務化の罰則について現時点でわかることをまとめてみました。

法務省からの通達を元に説明をします。 法 務 省 民 二 第 9 2 7 号 令 和 5 年 9 月 1 2 日

相続登記の放置は犯罪なのか?

相続登記を怠ると過料の対象となります。

過料は、交通違反のような比較的軽いルール違反に対して課されるお金のペナルティです。過料は、ルールを守らせるためのちょっとした注意のようなもので、大きな犯罪には使われません。

刑事罰は、盗みや傷害など、もっと重い犯罪に対して課されます。これには罰金だけでなく、刑務所に行くというペナルティも含まれることがあります。刑事罰の目的は、犯罪をした人を罰することと、他の人が同じ違反を犯さないようにすることです。

つまり過料が科されるというだけで、犯罪となるわけではないということを最初にお伝えしておきます。

罰金(過料)はいくらなのか?

では、その罰金(過料)はいくら支払わなければならないのでしょうか?

結論をお伝えすると過料は10万円以下になります。

裁判所が決めるようです。

過料は、10万円以下の範囲内で裁判所において決定されます。

相続登記の申請義務化に関するQ&A

どういう場合に罰金(過料)を払うことになるのか?

「相続登記が義務化された」「放置すると罰金だ」というところは、しっかり知れ渡っているのですが、例えば、あなたのお父さんが購入した家があって、あなたのお父さんがお亡くなりになったとします。

そうしたら、お亡くなりになって何ヶ月以上、または何年以上放置していたら罰金(過料)を支払わなければならなくなるのでしょうか?

結論としては、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければならないとされました。

2024年4月1日以前に発生した相続についての決まりもありますが、話が複雑化してしまうので割愛します。

罰金(過料)が科されるまでの流れ

相続登記を3年間放置していたとします。そうなったら自動的に10万円の過料が科されるのか?と言われればそうはならないでしょう。なぜなら、登記官が登記が放置されているということを把握する事が困難であるためです。

罰金(過料)が科される流れはこのように説明されています。

1
登記官の認知

登記官が、義務違反を把握した場合、義務違反者に登記をするよう催告します

2
裁判所への通知

催告書に記載された期限内に登記がされない場合、登記官は、裁判所に対してその申請義務違反を通知します。

3
裁判所の判断

要件に該当するか否かを判断し、過料を科する旨の裁判が行われます。

「登記官の認知」がこれがとてつもなく難しいでしょう。。。と感じます。法務局に勤めていて、不動産の所有者が死亡したなんてこと積極的に調査しない限り気が付きませんからね。

それについては法務省のQ&Aにも書かれています。

そして更に「職務上知った時に限り」という文言まであります。

「職務上」というのは例えば、自分の友人の葬儀があって、相続登記しなきゃということを知ったとしても、それは除外するということになりますね。

登記官は、相続人が不動産の取得を知った日がいつかを把握することは容易ではありませんので、次の(1)又は(2)を端緒として、義務に違反したと認められる者があることを職務上知ったときに限り、申請の催告を行うものとしています。

相続登記の申請義務化に関するQ&A

職務上知った時ってどういう時?

「職務上知った時」ってどういう時があるかなと想像をしてみました。

一番有り得そうだなと感じたのは平成29年に開始された”法定相続情報一覧図“の作成時ですかね。

法定相続情報一覧図の申請書に、被相続人名義の不動産があるかどうかのチェックボックスがあります。

あそこで「有」として、不動産番号を書いて法定相続情報一覧図作成の申請をしたら、それは職務上知り得ることになるでしょう。

ここまで予定して、法定相続情報一覧図の制度を設計していていたのであろうなと感じます。

個人的に「こうすればいいのに。。。」というのは、その役所の資産税課、つまり固定資産税を扱っている部署が法務局と連携すればいいのになと。

相続登記は放置されていることは多いけれども、固定資産税の支払いについては、結構手続きをされているというのが相続業務に携わっていて感じます。資産税課は税金の徴収がお仕事だから一生懸命「相続人はだれだ?」というのを調査しますからね。

また、固定資産税の手続きをすることで、「不動産の相続手続きは完了した」と勘違いしてしまっている人も少なくなかったりします。

その固定資産税の支払人は代表してひとりが登録されることになるので、その人に相続の全負担が行ってしまうというのは、ちょっと重たすぎるかなと感じるところもあります。

誰が払うことになるのか?

この制度が公になった時最初に頭に浮かんだことです。

なぜ、「相続人がひとりである」という前提の設計になっているのかと。

相続人がひとりである場合の方が圧倒的に少ないです。父母子ひとりの場合で、父が死亡しました。

相続登記を放置していました。罰金(過料)がかかることとなりました。

さて、母と子それぞれ10万円ずつ支払うことになるのでしょうか?

それとも5万円ずつになるのでしょうか?

これについての答えにはたどり着くことができませんでした。

この例はまだ人数が少ないからよいのですが、実際には、相続人がもっと人数が多くなるという事が少なくありません。

支払いを免れることができる時は?

相続人の人数がとてつもなく多くなってしまうと伝えました。実はその場合は正当理由があるということで過料を免れる事ができる可能性が高いです。

正当理由がある場合は過料を免れることができる旨が規定されています。

罰金(過料)を免れる正当理由
  1. 相続登記の義務に係る相続について、相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
  2. 相続登記の義務に係る相続について、遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合
  3. 相続登記の義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
  4. 相続登記の義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
  5. 相続登記の義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合

罰金(過料)払えば相続登記しなくていいのか?

仮に過料の10万円を支払わなければならなくなったとします。その10万円を支払ったとします。

そうしたら、もう相続登記はしなくてよいのでしょうか?

そのような都合のよい仕組みは用意してくれていません。相続登記をしなければならない義務は残ります。

この放置を繰り返したらどのようになるのかについてまでは現時点ではわかっていません。

まとめ

相続登記を放置したら過料が科せられるという事で、その過料についてだけに焦点を当てて現時点でわかっている事を伝えてみました。

過料が科されるのは3年以上放置している不動産についてなので、はじめて過料が科せられる人が出るのは3年後になることでしょう。

「4月から相続登記が義務化された!」という事で手続きをしなければならないと考え始めるのはとてもよいことですが、焦りすぎて、正しい判断ができないような状態にだけはならないようにしましょう。

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