はじめて自宅を賃貸に出そうという方のために、管理会社を選ぶ際に、不動産屋さんの”選び方”ではなく”選んではいけない不動産屋”を見分けるポイントを伝えています。

本日は、「うちの会社は客付け力がすごい!」と”客付け”の強さをアピールする会社は選ぶべきではないという事をお伝えします。あくまでも部屋を貸し出す側の目線で、募集を含めて管理まで依頼したいという人に向けての内容となります。

2種類の不動産屋さんの説明

最初に意外と勘違いされがちなことなので、賃貸で借りる時も貸すときも不動産屋さんは2つ出てくるという事を説明します。

画像のように大家さんとなる貸主側の不動産屋さんと、借主側の不動産屋さんの2つがあります。

貸主側の不動産社を”元付け“と呼び、借主側の不動産屋を”客付け“と呼びます。

貸主側の不動産屋と借主側の不動産屋さん

「客付けに強い!」とアピールしているのは、あくまでも借主側へのアピールが強いというだけで、元付け側に必要となる知識や、賃料算出のために必要となる情報収集力、入居後の管理の修繕やトラブル解決のノウハウが強いとは結びつかないのです。

参入障壁の低い”客付け”vs参入障壁の高い”元付け”

元付け側の不動産会社には様々な知識やノウハウが必要である事の証明のひとつとして”参入障壁”があります。

現在不動産屋さんは全国で約13万社あります。これは宅建業者の登録数を元にした数値です。(令和4年度末時点)

それに対して、賃貸住宅管理業の登録者数はまだ1万に満たない約9,300社程度の登録数です。(令和5年度末時点)賃貸住宅管理業の登録は、管理戸数が200戸を超えている業者は登録の義務があります。管理に力を入れたいと考えている会社が登録をしないという選択肢はないと断言できます。

全国に13万社ある不動産屋さんの大半が、”客付け側”の不動産屋さんです。賃貸住宅管理業に登録している不動産屋は9,300なので、全体の約7%しか”元付け側”に力を入れている業者はないと見ることができます。

全国に13万社という数字は、コンビニが全国に6万弱しかないので、コンビニの2倍ほどの不動産屋があるという事です。つまり、それだけ参集障壁が低いものであると見ることができます。

それに対して、不動産屋になったものの、元付け側、つまり管理に力を入れていくためには、客付け側とは大きく異なり、不動産屋のうち7%しかなることができていない参入障壁の高いものと見ることができます。

繰り返しになりますが、”客付け”を中心とする会社が悪いということを伝えたいのではなく、大切な資産を預ける賃貸管理会社を選ぶのであれば避けるのが無難であるという事を伝えたいのが目的です。

“客付け”の強さアピールの裏側

賃貸管理会社を選ぶ際、大家さんであるあなたが見るべきは”元付け”の強さであり、入居後もいかに賃貸管理を適正に行ってくれそうかというところです。

それにもかかわらず「私たちは客付けに強いです!」「客付けが地域ナンバーワンだから、すぐに入居者を決める事ができます」とアピールを重ねる業者が跡を絶ちません。アピールする箇所を単純に勘違いしてしまっているであろうというのがあるのですが、大抵の場合、裏側の理由がしっかりあります。

“元付け””賃貸管理”の経験不足

一番多いのは単純に賃貸管理会社としての経験が不足していて、賃貸管理会社としてのアピールできるポイントがないからでしょう。

上述のとおり、日本の不動産屋さんの大半が”客付け”に重きを置いている会社で、元付け側、管理会社側にはなかなか進む事ができていません。(管理会社化が正しいというわけではないです。)

しかし、客付けばかりではなく、元付け側へとシフトしたい会社は多数出てきて、近年その傾向はより強くなっているなと感じます。客付けの強さのアピールがすごい不動産会社は、「私たちは今は客付け会社だけど、今元付け会社側にシフトチェンジしようとしている会社です」という状況の会社である可能性が高いといえます。

そんな変化をしていく姿を見るというのも楽しみのひとつだという方もいるかと思いますので、必ずしも悪いとは得ませんが、やはり経験不足は否めないでしょう。

経験不足であるから、顧客である大家さん達のニーズを履き違えて客付けの強さをアピールしてしまっていると見ることができます。

「客付けが強いです!」とアピールする会社の宅建業者の免許番号を見てみてください。だいたいが(1)という数字になっているはずです。

囲い込みをしたい

“客付け会社の経験不足”というものであれば、とてもかわいいものです。客付けが強いアピールをする真の狙いはこの”囲い込み”というのを狙いすぎの不動産会社である可能性も高いです。

囲い込みはつまり仲介手数料を自社だけで独占するためのものです。言葉ではわかりづらいかと思いますので、図解します。

通常は、元付け側の不動産会社は貸主から、客付け側の不動産屋は借主から、それぞれ手数料をもらうという形になります。

囲い込みだと

囲い込みをすると、元付けも客付けも同じひとつの不動産会社となるので、手数料が2倍になります。

大家さんとしては「入居者が早く決まればいい」という考えでいるかと思いますが、これはとても公平を害する行為で、アメリカを中心として、世界では囲い込みは禁止されています。シンガポールにおいては囲い込みという概念する起こり得ないと言われています。

利益相反取引

なぜ、囲い込みが禁止されているのが世界の通常となるのかは明白です。

利益相反取引(りえきそうはんとりひき)にあたるためです。

高く貸したい貸主と、安く借りたい借主、この間に入る不動産屋さんが一社でよいのでしょうか?

すごく極端な例ですが、交通事故の損害賠償の裁判で、事故を起こした加害者の弁護士と、被害を受けた被害者の弁護士が同じ人でよいわけではないというのは想像がつくかと思います。こういった形を”双方代理”と呼び民法の第108条で明確に規制されているにも関わらず、不動産会社は媒介取引だからと許されている不思議な状態になっているんです。

チャンスも逃している

それでも大家さんとしては、「入居者が早く決まればいいよ」と思うかもしれません。

しかし、囲い込みによって本来もっと好条件で入居してくれるかもしれない人がいたかもしれないというチャンスを逃しているという可能性もあります。なぜなら、囲い込みをされると、人の目に入る回数が極端に少なくなってしまうためです。

本来不動産屋さんは日本全国の不動産屋同士が協力して、入居者をマッチングさせていました。つまり、日本全国の不動産会社が書けている見込み客すべてが入居候補者となり得るというのが本来の不動産業界の正しい姿です。

囲い込みだと

どんなに大きな不動産屋であろうと、日本全国の紹介し合うシステムでの全ての客付け業者が抱えている入居希望者の顧客数を超えるということはありえないでしょう。

このように囲い込みをすると、大家さん側にとってはデメリットしかありません。もっとも自分の部屋が賃貸に出ていることをあまり人目に晒したくないという人もいるかもしれませんが、”少しでも良い入居者を”という入居者の選択肢の数という観点ではプラスになることはひとつもないと言えます。

入居後も続く利益相反

入居者の募集の時点でも、高く貸したい貸主と安く借りたい借主の利益相反がありました。

囲い込みを行う不動産業者はそのまま賃貸管理も行うというのが一般的でしょう。そうなると、入居後も利益相反の関係が継続します。

トラブルの時にどっちに味方をするのか。。。日本人はそういった時の揉めすぎないようにとバランスを保つのがとても上手な国民なので、大事になることは少ないですが、とても歪な状態であるというのは間違いないでしょう。

まとめ

以上が、客付けの強さをアピールする会社に賃貸管理を依頼しないほうがよいと考える理由でした。

必ずしもすべてが当てはまるわけではありません。

客付けに重点を置く不動産会社は、表面的に魅力的に見えるかもしれませんが、賃貸管理に関して必要な専門知識や経験が不足していることが多いです。そのため、長期的に見て自分の資産を守り、効率的に運用するためには、元付けに重点を置く不動産会社を選ぶことが重要です。これらの会社は賃貸管理の専門性を持ち、トラブル解決や適切な賃料設定、入居者とのコミュニケーションといった面で優れている可能性が高いです。

また、囲い込みを行う不動産会社を選ぶと、利益相反の問題や、より良い入居者を見逃すリスクがあります。囲い込みは短期的には入居者を見つけやすいかもしれませんが、長期的には貸主と借主の双方にとって最適な解決策を見つけにくくなります。

結局のところ、賃貸管理を依頼する際には、客付けの強さよりも、賃貸管理の専門知識、経験、そして貸主と借主の双方の利益を考える姿勢を持つ不動産会社を選ぶことが重要です。そのような会社は、安定した賃貸経営と、長期的な資産価値の維持に貢献します。大切な資産を任せる不動産会社を選ぶ際は、これらの点を十分に考慮して判断することが大切です。

そのために知りたいこと、もっと聞きたい情報がありましたらお気軽にお声がけください。