自宅を賃貸物件として貸し出す際に、室内の写真は不可欠です。物件探しをする多くの人々がsuumoなどのポータルサイトにて一番重視するところは”写真”と回答する人が大半です。

しかし、自宅を賃貸に出そうとするオーナーの中には、撮影した部屋の写真に個人的な物が写り込んでしまい、それらが原因でプライバシーに関する懸念からポータルサイトへの掲載を躊躇する方もいます。このような機会損失を起こさないように、”家具消し”サービスを行っています。

このサービスは、部屋の写真から個人的なアイテムをデジタル上で除去し、プライバシーを保護しつつ、物件の魅力を最大限に引き出し機会損失を最低限に抑えることが期待できます。

この”家具消し”サービス自体はよいものと捉えているのですが、「そんなにお金かけるの?」という位の費用請求をして、それを餌に専任媒介を取ろうとしている業者がいることを知り驚いています。

家具消しの例

家具消しについての説明は言葉でするよりも実際に見ていただくのが早いでしょう。下記画像でBefore Afterをスライドして見ていただくことができます。

これにより、入居中の部屋の画像をたくさん載せることができるようになります。

共に私が手元にある画像から作成したものです。

宅建業法の広告違反になりうる

不動産の広告にはとても厳しい成約がたくさん課せられています。

実際に取引する物件の写真を使用する」というのが大前提になります。その「画像の修正は行ってはならない」というルールがあります。

写真を不当に美化する目的での加工は認められません。例えば、外観写真から電線を消す行為などがこれに該当します。

許されている加工は、プライバシー保護の観点から表札や車のナンバープレートを消す加工のみとなっています。

これらから家具消しについて言及されているわけではありませんが、問題になりうるということは間違いないでしょう。

また、私自身が先程の2枚の画像の加工を行ったのでわかるのですが、実際と異なるというところは細かいところを見るとたくさんあります。

昔ながらの不動産屋の手法

不動産業界において、昔ながらの業者がクリーニング費用や壁紙交換、フローリング交換などの費用に上乗せして利益を得ていたことは、ある程度知られています。このような商法は、サービスの価格設定が不透明であった時代には一定の受け入れがありました。しかし、インターネットの普及により情報の透明性が高まった現代では、原価が容易に把握できるようになりました。

その結果、消費者はより良い価格でのサービスを求めるようになり、結果として上乗せして利益を出していた業者の数は減少しています。

1枚につき10,000円という価格を聞いて、家具消しサービスに関して、過去の不動産業者が行っていた上乗せ商法を彷彿させます。この家具消しを依頼する相場を知っているためそのように感じました。※繰り返しますが写真加工技術者に対しては敬意を表しています。

家具消しを否定するわけではない

この技術を否定するわけではないですし、こういった画像の修正を行う技術者さん達には尊敬の念を抱いています。

問題提起したい点は、賃貸の専任媒介契約のために「通常は1枚10,000円のところこの家具消しサービスを無料にします。」というシステムを営業手法として組み込んでいる会社があるというところです。

まず専任媒介という仕組み自体に私自身はクビを傾げています。それについてはこちらに書いておりますので合わせて参照ください。“専任媒介”をゴリ押しする不動産屋は信頼に値しない

専任媒介のためにそこをアピールするものなのかなというところです。

最新技術は大歓迎

不動産屋さんの広告規制に対して確かにグレーではあるものの、宅建業法はあまりにも時代に追いついていない古臭いものになってしまっているというのが現実です。

すべてをそこに合わせる必要はないと考えており、最先端の技術をどんどん取り入れていくというのは大歓迎です。

自分たちの技術を磨くべき

商売をやっている人間からは「外注する時に料金を上乗せして何が悪い?」と言われてしまうかもしれません。まったくそれについては異論はございません。

ただ、勝負をするところにズレがあるなと違和感を感じています。

2023年のMidjourneyの登場以降画像業界のAIの成長は著しいものがあります。

実際私が行った家具消しもAdobeFireFlyで行ったものです。これまで画像の加工なんかの技術を習ったことはありません。それでも冒頭部分の加工程度なら少し触ればできるようになっているという時代です。

みんな少しやってみればできるようになるものなので、自社で磨いてもよいものではないでしょうか。

勝負する場所が間違っている

私たち賃貸の管理会社側の不動産屋さんは”料金を上乗せして稼ぐ”というものではなく、”いかに早く入居者を決めるか”というのが頑張るべきところであると考えています。

家具消しによって、広告の見栄えがよくなりますし、出すことができなかった広告画像の提供もできるので、入居者を早く見つけるための営業活動のひとつと呼ぶことはできるかもしれません。

ただ、そこで料金を上乗せしたり、それを条件に専任媒介契約にしようと考えるというのは、勝負するところが、悪い方にずれているなと感じます。

言葉を選ぶずに伝えると、時代遅れの利益追求です。

現代では、消費者はサービスの価値に見合った適正な価格を支払うことを望んでいます。

結局、不動産業界は昔ながらの手法でしかできないのかなと少し寂しい気持ちになりました。

まとめ

この記事では、家具消しサービスの重要性、宅建業法における広告の取り扱い、そして不動産業界における古い商法と新しい技術の利用について触れました。技術の進歩により、今や多くの人が手軽に高度な画像編集を行える時代になりましたが、それに伴う料金設定やサービス提供の透明性が今後の業界における大きな課題となるでしょう。

不動産業界では、旧来の方法に固執するのではなく、消費者のニーズに応える形でサービスの価値を正しく伝え、適正な価格設定を行うことが求められています。家具消しサービスをはじめとする新しい技術を活用することは歓迎されるべきですが、それを提供する際には、公平かつ透明性のある態度が不可欠です。

新しい技術やサービスを適切に活用し、時代に即した方法で業界をリードしていく不動産業者を選びましょう。