定期借家“という言葉をご存知でしょうか?

平成12年。。。つまり、西暦2000年という20世紀の終わりと21世紀の始まりの狭間に”良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法“が施行され、日本の賃貸業界を、特に賃貸オーナーさんを揺るがした”定期借家制度“が設けられたのです。

「変な入居者が入ったらどうしよう」「転勤の間だけ貸していたい」「またこの家にいつか戻ってきたい」という悩みをお持ちの方に最適なものです。普通の賃貸借契約と何が違うのかについてお伝えします。

再契約型の定期借家は大家さんの味方

大家さん側から入居者に退去を迫るということができなかったという時代がありました。賃料の滞納のない優良な入居者だけであればよいのですが、現実問題としては毎回家賃の支払いが遅れる入居者、居住マナーを守らない入居者が一定数いました。それらに対してどうすることもできなかったという時代がありました。

それが平成12年の定期借家の登場によって大きく変わりました。まだネットの普及していない時代だったので、不動産投資に熱心な大家さんたちはこぞって定期借家の情報交換会を開き、どのように活用するのかを検討しました。

そこで生まれたのが”再契約型の定期借家“というものです。入居者がよほど一般常識とかけ離れた悪質なことを行わない限り再度契約を保証するという賃貸借契約の形です。

今でこそ珍しくはないのですが、2000年の不動産オーナー界隈では、2002年のサッカー日韓W杯の渋谷のように歓喜の渦が沸き起こっていました。

再契約型の定期借家は、部屋を賃貸に出したいけど「不良素行な入居者が入居したらどうしよう。。。」という不安を解消することができる制度です。

転勤留守宅に嬉しい定期借家契約

再契約型の定期借家の説明からしましたが、具体例を使って定期借家の基本についてお伝えします。

通常の普通賃貸借では、貸主側から契約の解除を申入れても貸主側に「正当事由」がなければ入居者に出ていってもらうことができません。

「正当事由」は極めてまれにしか認められません。大家さん側からの正当事由は検索したら全部暗記できるのではないのかというくらい稀にしか認められないものです。結果的にいつまでたっても立退きを求めることが困難なのが実情なのが、普通賃貸借です。

具体的な例を用いて説明します。住宅ローンを使ってマンションをひと部屋購入しました。転勤が決まりました。その間ローンの支払いは残っているので、賃貸に出してローンの支払いにあてていました。

転勤から帰ってくる時に。。。入居者に出ていってもらうという手段がなかったのです。そこで設けられたのが定期借家という制度というわけです。

賃料減額請求権の排除

定期借家権が大家さん側に使いやすいメリットのひとつとして家賃の減額請求権を排除することがあげられます。

普通賃貸借契約では、家賃の増減額の請求権は厚く保護されており、賃料増減額請求権を排除する特約は認められていません。※”増額しない”という借主さんにお得な特約は認めら得ています。

定期借家契約であれば、賃料減額請求権を排除することができます。

これにより定期借家契約であれば、安定した収益性を保てるといえます。

定期借家のデメリット

物事にはいいところばかりではなく、悪いところもあるのが通常です。定期借家にもデメリットは多数あります。貸主目線での定期借家契約のデメリットについてお伝えします。

定期借家は家賃が低くなる傾向にある

普通借家契約であれば、賃借人がそこに住み続ける事ができるインセンティブを握っています。そのインセンティブが貸主側に移行することにより、やはり賃料は相場よりも低めに設定せざるを得ないという現実があります。再契約型の定期借家であれば家賃の差は大きくないという印象は持っています。

貸主側からの解約はできない

定期借家契約の期間内は、借主側は期限終了を待たずして退去して全く問題ありません。しかし、貸主側からは賃貸借契約中は解約をすることはできないのです。あくまでも期間が満了した時に退去してもらうという事が前提になっています。入居者と話し合っての合意解除はもちろん可能ではあります。

定期借家は法人契約が不可

これはすべての法人というわけではないのですが、大手法人の大半は定期借家契約を不可としています。

大手法人が入居者になってくれるというのは、普通は嬉しいものです。しかし、法人からすると、社員に2年ごとに引っ越しをされてはたまったものではないので、法人側が定期借家を不可にするというのは致し方のないことであります。

定期借家契約が前提でも法人契約の場合は相談可能としているところも少なくはありません。

普通借家と定期借家の比較表

普通借家と定期借家契約それぞれの特徴をざっくりと比較しました。
項目 普通借家 定期借家
メリット
  • 長期的な入居により安定した収益を期待できる
  • 賃料設定は相場どおり
  • 素行の悪い入居者を排除できる
  • 契約期間が満了すれば、借主に立ち退き料を支払う必要がなく明け渡しを求めることができる
  • 貸主の都合で貸し出す期間を決められる(例:海外転勤、解体・建て替え予定など)
  • 家賃減額請求を特約で排除でき、安定した収益性を保てる
デメリット
  • 契約解除が困難で、正当事由が必要
  • 立ち退きを求める場合、高額な立ち退き料が発生する可能性がある
  • 書面による契約が必須で、事前説明義務がある
  • 賃料設定が通常の相場よりも安くなる可能性がある
  • 大家側からの中途解約が原則としてできない
  • 法人契約ができない

最後に

定期借家制度を使って賃貸に出すのか?普通賃貸借契約で賃貸に出すのか?悩まれる一番のポイントは「じゃあそれぞれ賃料はいくらになるの?」という点になる事でしょう。

普通賃貸借の場合も定期借家契約の場合の賃料も無料にてすぐに査定しますので、どうぞお気軽にお声がけください。