自宅を賃貸として貸し出す際に気になる点として、「自分たちの個人情報が勝手に見られたりするのかな?」と不安に感じられる方もいらっしゃることかと思います。
私たち株式会社いえどきは、宅地建物取引業者としても賃貸住宅管理業者としても、個人情報の保護秘匿義務を負っています。
それでも、弁護士さんから開示の請求を受けた時は「開示をします」ということをお伝えします。
実際に、本人の同意がなくても業者は弁護士からの請求に対して請求してもよいという裁判例があるので紹介します。
守秘義務違反にならない判決事例
弁護士の弁護士法に基づく照会に応じた情報提供について、個人情報保護法違反や宅建業法の守秘義務違反には当たらないとした事例
この判決例についてお伝えします。
登場人物




前提条件
XはYの媒介で借主に自己所有のマンションの一室を賃貸し、Yと賃貸住宅業務委託契約を締結しました。
XとBは離婚調停中で、婚姻費用分担の調停事件が係属していました。
C弁護士は、XとYの間の管理委託契約と賃貸借契約の存在及び契約書の写しの交付についてYに報告を求めました。
それに対して、宅建業者であるYはそれらの情報を弁護士に提供しました。それが個人情報保護義務違反だと貸主が宅建業者を訴えたという事案です。
(秘密を守る義務)
第四十五条 宅地建物取引業者は、正当な理由がある場合でなければ、その業務上取り扱つたことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。宅地建物取引業を営まなくなつた後であつても、また同様とする。
宅地建物取引業法
各々の主張

Yさん、あなたは私の同意なしに私に関する個人情報を第三者に提供しました。これは明らかに個人情報保護法と宅建業法の守秘義務に違反しています。
この行為によって、離婚紛争の存在等が本調停等で不特定多数の第三者に公開・開示されること等により大きな精神的苦痛を私は受けました。そのため、慰謝料と弁護士費用の支払いを求めます。

私たちが受けた弁護士法に基づく照会に応答することは、法律で認められている正当な行為です。

しかし、私の同意を得ずに個人情報を開示したことには変わりありません。特に、私の住所、氏名、印鑑、取引銀行口座などの情報が含まれていたことは許容できません。この情報が離婚調停以外で使用されることへの懸念や、私のプライバシーへの侵害は深刻な問題です。

Xさん、私たちは照会を受けた際に、その必要性と合理性を慎重に評価しました。あなたから得られる賃料収入の情報は、調停における重要な証拠となり得ます。そのため、弁護士法23条の2に基づく申し出に応じ、必要な情報を提供したのです。これは、あなたの個人情報保護よりも、公正な裁判過程を優先する必要がある状況でした。

私はそのような状況を理解していますが、事前に通知や同意を求めるべきでした。私のプライバシーと情報の扱いについてもっと配慮が必要だったと感じています。

Xさんの懸念は理解していますが、私たちは法律に従って行動しました。情報提供の必要性と合理性が認められ、それに基づいて適切に行動したと考えています。
裁判所の見解

不動産屋の照会に対する回答は違法ではない
弁護士法23条の2に基づく照会の制度は、弁護士が事件処理のために必要な事実調査や証拠収集を容易にするためのものであり、その必要性と合理性が認められる限り、報告義務を負うものと解される。
XとB間の調停事件における争点として、Xが本件建物から賃料収入を得ていたかどうかが重要であり、その情報を得るための合理的な手段として本件報告が行われたため、違法性は認められない。
まとめ
この記事では、不動産の賃貸管理における個人情報の取り扱いに関する実際の裁判例を紹介し、不動産業者がオーナーや賃借人の個人情報を第三者、特に弁護士の請求に基づき提供することがある状況についてお伝えしました。
特定のケースでは、宅地建物取引業者が弁護士からの照会に応じて個人情報を提供した行為が、個人情報保護法違反や宅建業法の守秘義務違反には当たらないと裁判所によって判断されましたが、弁護士からの照会があったからといたずらに回答するというわけではありません。
このような重要な情報が簡単に第三者に開示することは、例え弁護士からの開示請求であっても今後も慎重であるべきだと考えています。