Q
成約時に1カ月の報酬がかかると聞きました。10%の消費税が税金かかるようですが、かからない業者もあるようです。何が違うのでしょうか?税金が必要な背景など教えてもらえると幸いです。
A

結論からお伝えすると、「消費税がかからない」ではなく、「消費税込み」の金額表記をされて、消費税の説明が不十分であっただけであると思われます。

報酬に対してはすべて消費税の10%がかかります。「消費税がかからない業者」というのがあるとしたら、インボイス制度開始に伴ってインボイス登録をしていない業者であると思われます。年間の売上が1000万円未満である業者であり得ない話ではないのですが、「消費税がかからない」という表現には違和感を覚えます。そういった業者は信頼に値しないかなというのが正直な感想です。

消費税については、2023年10月よりインボイス制度が開始されました。それについて賃貸物件のオーナーさんが考慮すべき点、注意すべき点が少なくないので、質問に付随して伝える事ができることをお伝えします。

家賃に消費税がかからないが普通じゃない

大前提として、消費税というのは基本的にすべての物品サービスにかかるものです。

すべてのものに消費税がかかるという前提で、「消費税がかからないもの」がいくつか列挙されているというものです。

その代表例が賃貸オーナーさんにとって最も身近である”家賃“になります。家賃は賃貸住宅に居住する人の誰もが負担しているものだから、家賃に消費税がかからない事が通常と勘違いしてしまっている方が大半なのですが、逆です。「家賃が消費税かからな」ものの例外のひとつとなっています。

例えば、事務所を貸し出したとしたら、事務所の家賃には消費税がかかります。あくまでも住居として使用するから消費税がかからないという仕組みです。

消費税の非課税となるものは国税庁のサイトに列挙されています。

(17) 住宅の貸付け

契約において人の居住の用に供することが明らかにされているもの(契約において貸付けの用途が明らかにされていない場合にその貸付け等の状況からみて人の居住の用に供されていることが明らかなものを含みます。)に限られます。ただし、1か月未満の貸付けなどは非課税取引には当たりません。

消費税非課税となる主なもの
  • 医療費(国民健康保険の対象となる医療費に限る)
  • 訪問介護サービスなどの費用
  • 住民票の発行などの行政サービス手数料
  • 学校の授業料や入学金
  • 教科書の購入費用
  • 株の売買(ただし手数料は課税対象)
  • 預金や貸付金の利子
  • 切手や商品券の購入
  • 土地の売買・貸付け
  • 住宅の貸付け など

いずれにしても非課税となるものは決められています。

免税店の仕組み

消費税がかからないものとして、”免税店”というのがあります。空港などで見かけたりした事があるのではないでしょうか?外国人の観光客が多いエリアでも”免税店”を掲げている、ドラッグストアなど少なくはないですよね。そんな免税店も消費税を払わなくてもよいケースがあります。

これもまた国税庁のサイトに条件が載っています。

免税店となる条件
  • 免税店となる許可を受けた店舗であること
  • 「非居住者」への販売であること
  • 通常生活の用に供される物品(一般物品、消耗品)であること。

免税店みたいなのが不動産事業者でもあるのかもしれないと思われている方がいるかもしれませんが、不動産事業者はそもそも免税店となる許可を受けることはできません。免税店の許可を受けることができるのは、あくまでも小売業者である場合に限られるためです。

余談ですが、免税店関係の報道でこのようなものがありました。iPhone数百台購入の例も…免税認めず、アップル日本法人に140億円追徴課税

消費税の免税事業者は信頼度が低い

不動産会社が賃貸オーナーさんから受け取る報酬に対して消費税がかかる、それが免税になるわけではないというのは伝わったかと思います。

その話とは別で、”これからは消費税を受け取ることができなくなる事業者”というのは出てきます。

インボイスの制度ができる2023年以前は年間の売上が1000万円未満であった、個人事業主、会社は消費税の納付しなくてよいという特例がありました。

年間の売上が1000万円未満の不動産会社からの請求書が消費税抜きであった可能性はゼロではありません。ただ、2023年までは消費税は年間の売上が1000未満であれば消費税をもらうだけもらって、納税はしなくていいというのが一般的でした。つまり消費税分代金を上乗せできていたというのが実態でした。そのため、消費税をもらっていなかったという可能性は低いといえます。

それらを是正しようというのがインボイス制度始まりの理由のひとつと言えます。インボイス制度施工後は、免税事業者は消費税の請求をする事ができなくなります。(いろいろな経過措置ありますが割愛します)

いずれにせよ、不動産という一般的に高額な取引があるにも関わらず、年間の売上が1000万円未満となってしまう会社はあまりにも経験値が乏しいと言わざるを得ません。または売上が1000万円未満になるようにコントロールをしていたか。。。請求書の作成が雑なのか。。。不正をしているのか。。。いぜれにせよ「信頼に値する会社ではない」と感じます。

賃貸オーナーさんのインボイス登録は慎重に

少し話は変わります。賃貸の経営をしていて「インボイス事業者に登録した方が良いのか?」という質問もよくいただきます。

インボイスと聞いて、「自分にはまったく関係がない」と感じられている方が大半と思われます。しかし、実は不動産のオーナーさんの大半がこの年間売上1000万円未満の個人事業主という立場になっています。家賃収入には消費税がかからないので、それを実感することがなかったのであろうと思われます。

インボイスに登録をするのかどうかは、個別に話を聞いて慎重に判断すべきことです。その理由を具体的な事例を交えてお伝えします。

賃貸オーナーは仕入額控除が使えない

例えば、八百屋さんで大根を110円(消費税10円)で仕入れて、220円(20円が消費税)で売りました。この取引だけなら八百屋さんが納める消費税額は差額の10円だけになります。この差額だけを納めればよいことを仕入額控除と呼びます。

この仕入額控除が賃貸のオーナーさんは使うことができないのです。例えば、クリーニング費用の際に支払った金額などが代表例です。

令和2年の消費税法の一部改正において、国内において行う居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額については、”仕入税額控除の対象としない“ことが明記されました。

消費税還付の仕組みがあり、その消費税還付スキームが行き過ぎであるとブレーキがかかってしまったという経緯があるためです。

これにより、消費税の仕組みは賃貸のオーナーさんにとってとにかく不利な仕組みとなってしまっています。インボイス事業者として登録をすることで得ることができるメリットが何もないに等しいと言っても過言ではない状況になっています。

インボイス事業者登録してしまうと出るであろう不利益な部分はもっともっとあるのですが、本筋とはズレてしまうので、この程度にしておきます。

インボイス登録についてのみならず、不動産賃貸借関係での税金についてもお気軽にご相談ください。

税理士を無料にて紹介します。